アベノミクスは失敗? 東西ドヤ街で労働者に聞いてみた

デイリーニュースオンライン

大阪の日雇い労働者が集う「あいりん労働福祉センター」
大阪の日雇い労働者が集う「あいりん労働福祉センター」

 アベノミクスやら東京オリンピックやらで本当に景気は回復しているのか? 日本の労働を支えるドヤ街のオッサンにインタビューしてみることにした。

 ちなみにドヤ街のドヤは宿の隠語。ドヤ街は日雇い労働者が宿泊するホテルが建ち並ぶ街である。筆者はホームレスの単行本を作るために15年以上前からドヤ街を取材している。

いまや福祉の街・山谷

 まずは東京代表のドヤ街と言えば山谷。昔から酔っぱらいが多い街だった。

 取材をしていて包丁を出されたのは、後にも先にも山谷だけである。しかも2回も出された。当然治安が良いわけはない。

 ただ、人通りは昔より、もっと少なくなった気がする。山谷の住人御用達のショッピングアーケード街「いろは会」はほとんどがシャッターが閉まっている。昼間から布団を敷いて寝ているホームレスや、花札をやっている人たちしかいない。

 あしたのジョーのオープニングで登場する、玉姫公園も今は柵で覆われている。その周りにところ狭しとホームレスがテントを建てている。将棋をやっている人が多く、一見牧歌的な風景である。暇そうにしているオッサンに話を聞いた。

「景気? んなもん悪いに決まってるだろ。仕事は50歳くらいまでの若い連中しかないよ。え? 50で若いかって? 若いよ。ここらで40歳だったら若もんだよ。ジジイはもう生活保護で暮らすしかねえよ。楽しみなんかパチンコしかねえよ」

 あ、今すごい社会問題になってる発言してる。まあ、別にいいけど。負けたら飯食えなくなっちゃうんでは?

「まあ炊き出しがあるからなんとかなるよ。もう山谷は労働者の街じゃないよ。福祉の街よ。ドヤもドンドン福祉マンションになってるしな」

 福祉マンションとは、生活保護や年金で借りられるアパートのことである。ドヤに泊まる労働者が激減しているため代わりに、アパートにしているのだ。

 僕が昔泊まったドヤもアパートになっていた。ちょっと切ない気持ちになっていると、山谷には似つかわしくない女子の匂いが。

 振り返ると、スポーツバッグを持った女子高生の集団がドヤから出てきた。ドヤを今風に綺麗に建て直し、外国人や学校のホテルにしているケースは多いらしい。東京オリンピックに向けての新しいビジネススタイルになるかもしれない。

 続いては、神奈川県横浜のドヤ街、寿町へ。

 こちらも外から丸見えで違法ギャンブルをしていたりと、山谷に負けず劣らず質が悪い。

 寿町から少し離れた場所に座っていた、オッサンに話を聞いた。

「俺はまだ寿町なんかなくて焼け野原の頃から働いてるよ。駅もなくって桜木町から歩いて通ってたよ。当時は仕事もあったし、活気もあったよ。毎日、酒のんで、ケンカ、ケンカ、ケンカの血みどろの日々だ!!」

 血なまぐさい青春を送っていたようで……。で時に、最近の景気はいかがでしょう?

「景気? よくないんじゃない? 最近はドカタの仕事はしてないなから、よくわからないな。もう30年くらい? 最近は、工場の人と個人で契約して、毎朝掃き掃除をするバイトをしてるんだ。毎朝だから大変だけど、まあある程度まとまったお金はもらえるよ」

 仕事がなければ作ればいい!! というとても前向きに生きているオッサンだった。

日本最大のドヤ街・西成

 最後は大阪のドヤ街西成である。

 「釜ヶ崎」や「愛隣地区」とも呼ばれる、日本最大のドヤ街である。西成ではドカタ仕事はもちろん募集しているが、毎日路上で露天が開かれているのが特徴だ。

 コンビニの廃棄弁当、電気工具、韓国製のタバコ(税金の関係で同じ銘柄でも安くなる)、海賊版ビデオ&裏ビデオなど様々な物を売っている。売ってるオッサンに話を聞いた。

「DVDは稼ぎどきだわ。高倉健が死んだやろ? そうすると高倉健のDVDがめっちゃ売れるんよ。死んだら急に見たなるんやな。でも最近は露天は厳しいよ。パトカーで回ってきて、露天を閉めろ~って言われるわ」

 なるほど、きっと今頃は菅原文太のDVDがバカ売れしているのだろうか。ちなみに15年前から、裏ビデオは販売していたが、当時はVHSだった。現在はもちろんDVDで、熟女ものが大人気である。

 麻薬の取引はまだまだ多いが、こちらも警察の取り締まりも厳しくなり、いつも売人がいた場所には24時間パトカーが停められ、警察官が立つことになった。

 ただ関係筋に聞いたところ、危険ドラッグは、東京よりずいぶん安く入手できるらしい。麻薬の取り締まりを厳しくしたら、脱法ドラッグが流行る。なかなか難しいところである。

 西成もドヤはなくなり、福祉アパートに変わっている場所が多い。住人の高齢化も激しいため、病院など治療施設がたくさんできている。街中で医療関係者が歩いている姿をよく見かけるようになった。これも新しい商売と言えるだろう。

 また老人をターゲットにした、カラオケ居酒屋のようなお店も増えている。見たところ、30すぎで、まだ綺麗なんだけど、キャバクラでは厳しいかも……ってな感じの女性が多く働いているようだ。色香を使って年金&生活保護を巻き上げてるわけだ。

 三角公園と呼ばれる大きな公園のわきでは、チンチロリン(サイコロを使ったギャンブル)が行われ人混みができている。ギャンブル関係は儲かっているみたいで、日本最大級のパチンコ場が作られている。その三角公園でぼうっと座っているオッサンに話を聞いた。

「アベノミクス? 関係ないよ。景気なんかずっと悪いまんまよ。仕事なんか全然ないよ。10年前? 別に10年前も景気悪かったよ。やっぱ東京オリンピックだなあ」

 おおやっぱり、2020年のオリンピックは、景気回復の原動力になってますか?

「バカ。違うよ。前の東京オリンピックだよ。忘れもしない1964年!! とにかく引く手あまたで歩いていると、腕引っ張られて連れて行かれるの。俺、一日で3回現場入ったことあるもん。活気あったよ~!! 治安? そんなの悪いに決まってるだろ。暴動だってしょっちゅうあったし、ケンカもそこら中で起きてた。何回も目の前で刃傷沙汰があったよ。でも忙しくて、そんなのに構っちゃいられないって感じだったな。ほんと懐かしいよ。で、オリンピック終わってから、ず~っと景気が悪いよ」

 ……なるほど、半世紀以上景気が悪いのか。それは深刻である。オッサンの責任のような気がしなくもないが。

 とりあえず、ドヤ街を支える建設業は相変わらず景気はよくないようだ。ただ、それぞれの街で、新しい商売ができていた。

 アベノミクスや東京オリンピックが、ドヤ街にどんな影響をあたえるかはまだわからないけれど、街も人もたくましく生き残って欲しい。

(取材・文/村田らむ)

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