とある大手酪農家が、ホクレン離脱を決断した理由
[どさんこワイド - 札幌テレビ]2014年11月28日放送の道内ニュースでは、生き残りをかけたある酪農家の決断が特集されました。
画像はイメージです(tetuさん撮影、Flickrより)
全国の牛乳生産の半分を占める酪農王国北海道。そんななか今年独自のルートで出荷を始めた酪農家がいます。
十勝の幕別町にある田口畜産です。大きな牛舎のなかでは600頭の乳牛が飼育されています。年間の牛乳生産量はおよそ5300トン。道内の平均的な酪農家のおよそ10倍です。
社長は経営の安定を目指し規模を拡大してきました。生産コストを下げるため、大型機械も購入。しかし、円安による燃料の高騰や電気料金の値上げなど酪農を取り巻く環境は厳しさを増しています。
牛乳1kgあたりの生産コストで比較すると飼育頭数が増えるとコストは下がります。しかし80頭を超えると、餌代などの高騰で再びコストは上昇。生産効率を追究した大規模酪農で今想定外のことが起きているのです。
経費の増加に悩む社長は、今年4月大きな決断をしました。ホクレンへの牛乳の出荷を止めたのです。道内ではほとんどの酪農家が絞った牛乳をホクレンに出荷しています。ホクレンは農家に代わって乳業メーカーと価格交渉し、乳化を決めます。ホクレンが牛乳の販売を一手に担うことでメーカーとの交渉を有利に進められるメリットがあります。40年近く続いている流通体制です。しかしその乳価がコスト高に追いつかず、社長は不満に思っていました。
そこで、自ら乳価の交渉ができる新たな販売先を開拓。群馬県の牛乳の卸会社と契約しました。入荷は1kgあたり90円。ホクレンと比べ1割ほど高くなりました。
ホクレンの流通体制から抜けたことで品質検査などは自前で行わなければなりません。日持ちのしない牛乳を本州に輸送するため4000万円かけて新たな設備も導入しました。生乳の鮮度を保つ冷蔵設備や冷やした牛乳を貯蔵するタンクを設置。これまで以上に品質管理の責任が大きくなりました。
ブランド化されればやりがいもUP社長は月に一度、契約した群馬の牛乳卸会社を訪ねています。出荷した牛乳の販売状況を把握するためです。
この牛乳卸会社は酪農家が作った会社で、今全国のおよそ50の酪農家から牛乳を集め乳業メーカーに販売しています。
なぜホクレンより高い乳価を支払えるのでしょうか。
手数料の部分は組織が小さく人数がいないので格安にできる。メーカーには安く提供、酪農家にとっては高く買い取れるのだといいます。
また、こちらの牛乳卸会社では今、北海道ブランドをうたったパッケージ牛乳の販売を計画しています。田口畜産の社長は「牛乳は混ぜれば誰の牛乳か分からなくなるがそれがカタチになるのはやはりやりがいにつながる」と。
乳価に翻弄される酪農家、ホクレンも対策をとらなかったわけではありません。
北海道の乳価はコスト高をうけて4年連続で上がり今年は過去最高の乳価となっています。安定した酪農経営を目指すホクレン。過去には、生産過剰による値崩れを防ぐため牛乳を廃棄する生産調整を行い、乳価の維持を図ってきました。社長にとっては、牛乳が目の前で捨てられるという悔しい経験でした。
社長は、「明日から集荷に行きませんよ言われれば、今まではそれで終わり。それを少しでも回避できる方策だと思っている。初めてまだ半年、はっきりとした手応えはないが、去年よりも利益率も上がっているし、経済効果が目に見えるようになってきた」といいます。
群馬の牛乳卸会社との契約は1年ごとに更新されます。以前よりリスクを抱えたホクレンからの離脱。生き残りをかけた挑戦は始まったばかりです。
牛乳を棄てた時代、今年のように生乳生産量が少なくバターなどの加工品にまわらず不足となる時代、かなり波がありますよね。コスト面ももちろんそうですが、生き物を相手にした農業ですから生産量による収入もその年によりけり。そんななか乳価がみあってないなると経営はしていけませんし。今後ホクレンから離脱する大規模酪農家は増えるのかもしれませんね。(ライター:北海道saki)