『ザ・インタビュー』騒動を酷評した町山智浩さん問題の余波|やまもといちろうコラム
やまもといちろうです。年末押し迫ったところで風邪をひきました。具合が悪いので医者にいったところ「ああ、インフルエンザですね。予防接種したんでこの程度で済んでるんですよ。ははっ。お大事に」とかミッキーマウスみたいな対応をされて苛立ったところです。なんかムカつく。でも他人に移すとまずいので、お家でおとなしくしています。
ところで、表題のお騒がせ映画であった『ジ・インタビュー』ですが、ソニー・ピクチャーズへのサイバー攻撃その他でフレームアップして大騒動に発展しております。この映画が馬鹿馬鹿しいというか、B級コメディであることはよく知られていて、そのあたりをTBSラジオ『たまむすび』にて事情説明してくれたのが我らの町山智浩さんであります。
なぜか分かりやすいログがネットにアップされていましたので、ご関心のある方はこちらを。
町山智浩 金正恩暗殺映画 ザ・インタビュー公開中止騒動の真相を語る
ところが、町山さんが本件を馬鹿にするのとは裏腹に、結構しんどい事態がサイバーセキュリティ界隈で発生しているようで、本来は北朝鮮関連とは無関係であるはずのソニー・ピクチャーズへのサイバー攻撃と話がリンクしてしまいました。
ソニー・ピクチャーズへのサイバー攻撃、北朝鮮が関与疑惑に反論
ついでに、北朝鮮のインターネット環境自体も攻撃されて、10時間ぐらいダウンしたという話も出ておりました。
こうなると、映画自体や周辺環境は町山さんが解説したとおりの関係者の知能指数合計30の世界だったとしても、引かれたトリガーの馬鹿さとは関係なく、深刻なサイバー攻撃の実態を見せつけるものでもあります。簡単にサイバー攻撃と書いてますが、仮に本当に報復としてアメリカ政府が小さな小さな北朝鮮のネット環境を潰したのだとすると、世界で初めて国家のインターネットが海外の勢力から完全にシャットアウトされた事例となるわけであります。
また、笑い事でないのは、北朝鮮だから良かったようなものの、これがある程度の進歩した医療システムが民間に開放されている国であったら、薬品の在庫管理システムや電子カルテ・レセプトといった、いまやインターネットにぶら下がらないと役立たずの各種医療系システム自体もダウンすることになってしまいます。
さらに、一部の電力インフラの制御系もインターネットと密接な関係を持っており、町山さんがいくら「馬鹿でしょ」といったところでこれが遮断されると瞬電が多発することになります。かなり本気で人が死ぬというか、人道的な問題に直結する部分ですので、単に「お前がやったんだろ」「いや違う」「嘘つけ! お前のとこのネット、落としちゃうぞー」などといった牧歌的な話ではなくなって、かなりシビアな安全保障の議論になっていくわけであります。
アメリカ政府がどうしてそこまで激しく拳を振り上げてしまったの、というのは本件とはまったく違う経緯がありまして、かねてから、ハリウッドを対象としたクラッキングを試みているハッカーグループに対する情報をFBIが蓄積していたことが背景にあります。つまり、北朝鮮に限らず望ましくない活動をしようという人たちが留学生の名目などでアメリカ国内に潜伏し、西海岸の慢性的な技術者不足に目をつけてリクルーティングされて続々とアメリカの大手企業に問題人物が入り込んでいる実態があるわけです。
最終的にアメリカ政府はそこまで問題人物をトレースしていたことは認めないとは思いますが、何らかの理由でこれらの工作を担当した要員がソニー・ピクチャーズ社または社の委託を請けてネットのオペレーションを管理していた会社に紛れ込んでいた可能性は高くあるのではないかと考えられます。
最近ではハッキングの問題も含めたサイバー攻撃対策も、結局は「人の問題だ」ということで、虱潰しに問題のありそうな人物をサーベイランスの対象とするしか、問題の抑止や早期解決には資さないのだということになりそうです。確かに、あのタイミングでFBIが北朝鮮を名指しするのは違和感はあったんですが、何か別の事情があったんですかねえ(ゲス顔)。
ということで、いましばらくこの問題は続くと思いますので注視してまいりたいと存じますが、町山智浩さんのTwitterアカウントが突然閉鎖されたのか、利用できなくなっています。本件とは関係ないとは思いますけど、こういう妄想を膨らませて陰謀論を展開しているのが一番楽しい案件でございますね。
さて、どうなりますか。
著者プロフィール
ブロガー/個人投資家
やまもといちろう
慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数
公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)