高倉健VS菅原文太「これぞ傑作!」10番勝負 (3/3ページ)
健さん自身、「あのときは芝居なんて考えられなかった。雪の中で立っているだけで、やっとの演技。まるでドキュメンタリーを撮っていたようなもの」と、インタビューで話している。
「部隊の責任者である徳島大尉を演じる寡黙な健さんに共感できました。この映画の成功で、雪景色が似合う男と言われ、その後、冬の北海道で多くの健さん映画が作られるようになりました」(小松氏)
その北海道の函館で、健さんが寡黙な居酒屋の主人を演じた作品が『居酒屋兆治』(83年)。居酒屋に来た客に「なにしろ、ぶきっちょなもんですから」と語る健さん。不器用だが、その圧倒的な存在感は、『幸福の黄色いハンカチ』や『鉄道員(ぽっぽや)』、そして遺作となった『あなたへ』の主人公とも共通している。
芸能レポーターも惚れる胆力
また、健さんほどの大物俳優となると、撮影中のエピソードにも事欠かない。
芸能レポーターの城下尊之氏は、こんなこぼれ話をしてくれた。
「とある映画の撮影中のことです。健さんらが泊まる旅館へ大勢のレポーターが押しかけ、映画のスタッフと押し問答になりました。すると、2階の外階段から旅館の浴衣着のまま健さんが下りてきて、ぼそっと、"あなたがた迷惑です。帰ってください"と、ひと言だけ言って、階段を上がっていったんです」
そのとき、レポーター陣は全員同じ反応をしたとか。
「怒られているのに、みんな、"格好いいなあ"って。旅館の浴衣でも、格好のいい着流しに見えたし、映画じゃなくても、ひと言で解決してしまうのが健さんなんだと、改めて敬服しましたね」(城下氏)
そんな寡黙で不器用だが、圧倒的な存在感を持つ主人公を演じることが多かった健さんだが、らしくない役にも挑戦している。極悪人を演じた『狼と豚と人間』(64年)も、ぜひ観ておきたい映画だ。映画評論家の秋本鉄次氏は本作をこう解説する。
「自分の利益のためだけに兄弟を拷問にかけ、平気で殺しをする。健さんには珍しい凶暴な悪役を演じた深作欣二監督作品です」
そして、文太さんが新境地を開いた作品と言えば『トラック野郎』だろう。車体に電飾やペイントを施したデコトラの運転手、一番星桃次郎に扮した文太さんと、愛川欣也が演じるヤモメのジョナサンが巻き起こすコメディ作品だ。全10作の人気シリーズとなったが、本誌は1作目の『御意見無用』をお薦めする。
「全編通じて、ハチャメチャなパロディのような映画。初めて観たとき、『男はつらいよ』のパロディ映画かなと勘違いしたほどです。しかも、寅さん映画よりお下品。マドンナが毎回出てきますが"やりてえ女だ"なんていうセリフも出てきますからね」(秋本氏)
時を経ても、日本人の心おとこを震わせ続ける"真の漢(おとこ)の姿"。この名画の数々を観れば、2015年も熱く過ごせること、間違いなし!