【日本人拘束事件】海外での報道はこうだった<UAE(アラブ首長国連邦)編>
『思いやりと勇気あるレポーターとして後藤さんの死は惜しまれた―「たとえ私に何があっても、私はシリアの人々をずっと愛している」―』という見出しで、UAEの新聞 gulfnews.com で、ISILによる後藤さんの人質拘束事件が報道されました。 今回はUAEのニュースをはじめ、主にドバイに居る友人の心境など、どのようにこの報道をとらえているか、お知らせしたいと思います。 尚、日本の主要メディアでは「イスラム国」と称しているのが現状です。どういう名称が正しいのか個人的には判断しかねますが、ここでは「“イスラム国”といえば、まるで国として存在し、イスラムの代表であるかのような印象を与える。イスラムの人にとって、きわめて不快な話だ」とする安倍首相と日本政府の見解に倣って、「ISIL」と表記します。
各紙で「イスラムでもなんでもない、許されない所業」

ドバイでも連日、ISILの事件が新聞でも報じられています。
新聞媒体は失念してしまい大変申し訳ないのですが、ドバイ在住のシリア人の友人によると、安倍首相の談話に関することが書かれた記事だそうです。
各メディアともに日本に哀悼の意を表明し、「これはイスラムでもなんでもない、許されない所業」として批判しています。
ドバイ在住日本人女性「世界のどこに居ても、標的になるときはなる」
安倍首相が「テロに屈しない」「罪を償わさせる」と発言したことにより、多くのドバイ在住の日本人に緊張が走ったのは事実です。ですが、UAEの治安は以前と変わらず、非常に平穏。取り立てて変わったこともなく、安定しています。
とはいえ、ドバイが安全でも、彼女たちのご主人(日本企業に在籍するドバイ駐在員)は、ドバイを拠点に、トルコやイラン、ときにはアメリカなど、中東だけではなく世界中に出張します。
彼女たちに、後藤さんの事件後、生活や心境の変化について聞いてみたところ、「生活はいたって変わらず安定している。世界のどこに居ても、(テロの)標的になるときはなる」「どこに居ても、気を付けなければ」「これ以上お互いが刺激し合うことにならないように願うばかり」と答えてくれました。
報道されないシリアのニュースも、知ってほしい

ザ・デイリー・スター・レバノン によると、シリアのダマスカスで2月5日、大規模な空爆で少なくとも57人が死亡、140人以上が負傷したというニュースが報じられました。
5日というと、ヨルダン軍パイロットのモアズ・カサスベ中尉が、ISILの捕虜として殺害されたと発覚し、その報復に、ヨルダン軍がISILに空爆を始めた日。この日のニュースは、ヨルダン軍の空爆のニュース一色で、このニュースは大々的には報道されませんでした。
シリア人の友人は、「日本やヨルダンの人質殺害事件については、大変残念に思っている。しかしながら、同郷の仲間数十人もの命が奪われても、取り立ててニュースにならない現状は、非常に悲しい」と、話していました。
UAEのドバイは、世界中からたくさんの人が集まる場所です。この記事を読んでいただいた日本の方に、ドバイの近況や大勢の人の思いなどが伝われば幸いです。
人質となって事件に巻き込まれた後藤健二さん、湯川遥菜さん、ヨルダン軍のパイロットのモアズ・カサスベ中尉、これ以外にも戦火で命を落とされた方々のご冥福を心よりお祈りします。後藤さんの「憎むは人の業にあらず」という気持ちを、一人ひとりが実践できる世の中になりますように。
ドバイ在住ムスリム「同じ宗教を信じる者の行動ではない」
「自分はイスラム教徒だけれども、ISILのメンバーは、イスラム教徒ではない。単なるテロ組織だ」――。
前述のシリア人でムスリム(イスラム教徒)の友人宅を訪問したとき、ニュースを見ながらこう呟いていました。
また、パキスタン人やインド人、エジプト人のムスリムの友人からも、「本来、イスラム教は“神”と“自分”との間で交わした約束を信仰するもの」「他人に自分の価値観や信仰を強要する宗教ではない」と、聞いたことがあります。
後藤さんの事件が起こる前に彼らと話したとき、「イスラム過激派と呼ばれる集団は、世界中に居る約16億のムスリムのうちの、ごく一部のイスラム教徒の行い。世界中のイスラム教徒も、過激派の行動に頭を抱えている。彼らと自分たちの信念とは、まったく異なる」と言っていました。