アメリカの自省なき「テロとの戦い」が招くもの (2/3ページ)
宮田:「聖戦」という教えを狭く捉えてあのような暴力的な行為をしているのは間違いないにしても、彼らが突発的にそういった考え方に至ったわけではなく、ハワリージュ派の脈々と続いてきた思想的な流れの中から出てきたということは理解しておくべきです。
イスラム過激派が各地に出てくる背景には、中東イスラム世界が安定しないことに加えて、独裁政権を敷く国が多かったということもあります。
この地に独裁政権ができた過程として多いのは、軍人がクーデターを起こして王政を倒して、軍事政権を作るというケースなのですが、こうして権力を握った人は民意を聞くようなことはしません。つまり、少数のサークルによって意思決定が行われ、軍事力で国民を押さえつける独裁政権になるわけで、これに対抗するには暴力しかないという事情もあります。そして、暴力によって現状を変えるためにも「宗教的な正当化」が必要だった。イスラム過激派が宗教を極端に解釈するというのにはこんな理由もあります。
この本を出す時に、単に「イスラムの人は友好的でいい人」ということだけでなく、なぜ彼らは暴力を振るうのか、イスラムの教義の中に暴力を行う論理があるのではないかという点についても触れたほうがいいという思いがありました。そこで「聖戦」や「過激派の思想」の起源についても書いたんです。
――イスラム過激派として活動していなくても、その考え方に共感する人はイスラム世界にはいるわけですよね。
宮田:それはそうでしょうね。たとえばイラクであれば、イラク戦争という本当に筋の通らない戦争で無辜の市民が何十万人と亡くなって、その中には家族や同じ部族の人もいる。こうした状況で復讐したいという思いに捉われるのも無理はないというのは、日本人の私ですら理解できるわけですから。
それと、イスラエルのガザ攻撃のようなひどい状況がイスラム世界に伝わって、アメリカ中心で作っている今の中東の秩序がとうてい平和的な手段では解決できないという思いが広く定着しているのは間違いありません。「筋の通らない現状を平和的な手段で解決できる望みがない」ということが暴力の行使に繋がっている部分もあると思います。