アメリカの自省なき「テロとの戦い」が招くもの (3/3ページ)

新刊JP



――サイクス・ピコ協定や石油利権の搾取、あるいはパレスチナ問題といった中東で起こってきた出来事を考えると、イスラム世界の人々が欧米に対して怒りを持つこと自体は理解できるものです。しかし、一度「テロ組織」だと認定されてしまうと、もう何を主張しても聞いてもらえなくなってしまいます。

宮田:中国政府はウイグル族の分離独立運動を「テロ」と言いますし、チェチェンの分離独立運動もロシア政府は「テロ」だとしています。「テロ」という言葉が政権側に非常に都合よく使われているという面はありますね。
パレスチナのハマスやレバノンのヒズボラをアメリカやイスラエルは「テロリスト」と呼ぶのですが、イスラム世界の人から見たら彼らはテロリストでもなんでもなくて、イスラエルに抵抗する集団です。
安倍首相をはじめ日本の政治家も「テロ」という言葉を軽々しく使いますが、これはアメリカと同じ発想です。アメリカは「テロとの戦い」をしきりに主張しますが、なぜ自分たちがテロを受けるのかを自省する姿勢はまったくないわけです。日本の政治家にしても、なぜイスラム過激派が暴力を振るうかという背景を知って「テロ」という言葉を使っているとは思えません。

――そうした「テロ」という言葉の乱発もあって、一部に「イスラム=怖いもの」だと思い込んでいる人がいるのですが、宮田さんの著書を読むとそれがまったくの偏見だとわかります。

宮田:人質事件が起きてから、ムスリムに部屋を貸さない不動産業者が出てきたりといった報道がありましたが、そういうことをすると当然彼らは疎外感を受けます。今ヨーロッパで起きていることを考えれば、彼らに疎外感を与えることがどんな結果をもたらすかということはわかるはずです。今までの日本社会ではあまりなかったとは思いますが、ムスリムに偏見を持たないでほしいですね。

――最後になりますが、宮田さんが2012年に創設した現代イスラム研究センターの活動について、今後の予定も含めて教えていただけますか。

宮田:イスラム世界に関係するシンポジウムを開いたり、イスラムの文化を紹介する記事を発信したりしています。
今年はイスラムの女性教育支援についてのシンポジウムをやる予定があるのと、国際政治学者の山本武彦さんや木村修三さん、イスラム研究家の水谷周さんといった理事の面々との共著で青灯社から本を出すことが決まっていて、4月か5月には発売される予定ですのでぜひ読んでいただければと思います。
(インタビュー・記事:山田洋介)
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