日本随一の「おもてなし」の伝道者が語る、心を通わせ合うことの大切さ【藤岡弘、INTERVIEW】 (3/5ページ)
相手から差し出されたものを、不安感を持たないでいただけるっていうのは実はすごいことなんです。例えば、私は仕事やボランティアで渡航することが多いんですけど、空港なんかで知らない人にいきなり缶コーヒー渡されたら「どうもありがとう」とは言うけど絶対飲まないですから。飲んだフリはしますけど。だってもし睡眠薬が入ってて、飲んだ途端にことっと眠ってしまって、目が覚めたら身ぐるみ剥がされて裸で放り出されてたらどうします? 海外ではそんなのしょっちゅうあることですよ。
――海外でのボランティア活動にも尽力していらっしゃいますが、現地で危険な目に遭われることもありますか?
世界っていうのは常に緊迫した状況にありますよ。バッグをそばに置いといて安心して食事できるのなんて日本くらいのもんです。日本ってすばらしいなと思いますね。私はこれまでに100カ国近い国々を旅してきましたけど、海外にいるときは常に持ち物は自分の身から離さず肩に掛けて歩いてます。例えば街中で争いが起きてたら、日本人だと「何があったんだろう?」って興味津々で近付きがちですが、そんなことしたら巻き込まれる可能性が高いですから。市内のマーケットでドンパチが始まったと思ったら警官が犯人を射殺して...なんて光景を見てきて、「海外に出ると、意識を緩めると自分の身に何が起こるか分からない」ということを認識するようになったんです。
それによって、人生観や価値観、自分なりの心構えがガラッと変わりました。自分の中に、「常に危機感を持っていないといけない」という回路ができたんです。
実は、「危機感を持つ」ためにも珈琲は役立つんですよ。珈琲のカフェインが意識を覚醒させてくれますから。日本にいると珈琲って安息感を得るための飲み物というイメージがありますけど、海外だと、戦闘モードへのスイッチを入れるために飲むことも多いんです。難民キャンプなんかに行くと、兵士たちが緊迫した状況の中で任務を全うするために珈琲を飲みながら24時間体制で戦っているんですが、そういう環境下において、意識をオンにするための珈琲って、とても大切な飲み物なんです。