【未解決事件】「柴又女子大生放火殺人」19年目のミステリー (3/3ページ)

デイリーニュースオンライン

捜査員が感じた“壁”の正体

 島根の事件は、捜査に付随する警察のメリットも大きかったという。警察は「捜査」名目で極度に権力の介入を嫌う大学内に大手を振って入ることができたからである。

「島根と比べたら、上智の壁の厚さはレベルが違う。各大学のそれらしきサークルのピックアップは行なっているが、上智は名門大学ということもあり、簡単に捜査員が入れるようなところではない。個人的には調べてみたいが、相当上の許可が必要になる。下手したら人権問題だけじゃなく、外交問題まで出てくることになる」(前出の元公安捜査官)

 上智大学はイエズス会の宣教師フランシスコ・ザビエルの構想を基に設立された大学である。戦後GHQの庇護の下、東京都の所有地であった四谷「真田壕」の土地は、上智大学が東京都との間で交わした「借地契約」によって手に入れた土地で、そこに日本におけるキリスト教布教活動の拠点が築かれた。こうした経緯から、上智大学はイエズス会の“大使館”のような機能を有しており、学校内への捜査は「外交問題」になりうるということなのだろう。

 本稿では「柴又女子大生放火殺人事件」の犯人に関する可能性を様々な面から探ってきた。警察は徹底的に捜査をやった。捜査関係者は「やれることは全部やった」と証言した。

 事件発生地域における捜査や犯人逮捕を妨げる政治的な圧力・要因もなかった。時効撤廃における警察の思惑──捜査費用の半永久的な計上というメリットという側面もこの事件には見当たらない。なぜなら地元は警察官僚出身の国会議員の選挙地盤であるからだ。

 だとすれば残された可能性は、犯人を逮捕したくてもできない事情があったということではないだろうか。その事情とはなにか──

「上智の壁の厚さはレベルが違う」

 捜査が難航したであろう状況は容易に想像できる。知人の医師が話していた噂は、あながち的外れな話ではないのかもしれない。

 下手に触れば外交問題にすら発展しかねない危険性をはらんでいるとしたら、多くの人間が躊躇するのが現実だろう。それは警察であっても例外ではない(文中一部敬称略)。

(取材・文/林圭介)

「【未解決事件】「柴又女子大生放火殺人」19年目のミステリー」のページです。デイリーニュースオンラインは、犯罪警察殺人事件社会などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧