酒鬼薔薇事件の加害者が発表した手記『絶歌』、犯罪心理の観点から見る、少年Aの心理とは (3/4ページ)
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"自分の生の軌跡を形にして遺したい。朝から晩まで、何をしている時でも、もうそれしか考えられなくなりました。そうしないことには、精神が崩壊しそうでした。自分の過去と対峙し、切り結び、それを書くことが、僕に残された唯一の自己救済であり、たった一つの「生きる道」でした。僕にはこの本を書く以外に、もう自分の生を掴み取る手段がありませんでした。"
さて、更生とはなんでしょうか。
前編では、彼の内なる感情は全く感じられません。それに対し、後編では、彼の葛藤が真摯に伝わってくる文章です。
人は、自分の生や成長や変化を何で知るのでしょうか。それは、同じ物体・同じ物事についての、感じ方・受け止め方の変化を感じた時です。人により、同じredであっても、林檎、血色、日の丸色と感じます。あの日の月の描写、独特ですよね。今の彼にはどのように月が見えるのでしょうか。もし、仮に彼が変化していたならば、月を見上げた時に、自分の変化に気づくでしょう。彼のことです。きっと繊細な言葉で表すでしょう。同様に、あれほどまで執拗に彼の瞳に映っていた猫は、どこへ行ってしまったのでしょう。
家族のことについて、できる限り触れないのも不思議ですね。けれど『絶歌』によって、再び家族を傷つけたくないという思いもあるのでしょう。意識的に書かないようにしている印象を受けました。彼にとっては、人を殺める記述をするよりも、自分の家族を思い出す事は、痛みを伴い、記述できないのではないでしょうか。なにしろ、公園で家族を見た時に、被害者の家族を思い出しても、自分の家族については思い出さないのですから。