【在日告白】バラエティで大人気の「長州力」が語った壮絶半生

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長州力が知られざる半生を告白
長州力が知られざる半生を告白

「小学四、五年生になるとちょっと元気がいいからトラブっちゃうと、やっぱりお前は朝鮮人だからとか言われる。そういう言葉を言われると、軀(からだ)から力が抜けていくのが分かった」

 こう語ったのは、一時代を築いたプロレスラーであり、最近では滑舌の悪さをネタにバラエティ番組に引っ張りだこの長州力(注1)。

 ノンフィクション作家の田崎健太が、長州に長時間かけてインタビュー。さらに様々な証言を加えて、その人生を解き明かしていく著作『真説・長州力1951-2015』(集英社インターナショナル刊)が、話題を呼んでいる。

 本では、レスリングでオリンピック出場、アントニオ猪木との出会いと新日本プロレス入門、長かった低迷期、藤波辰巳(当時)に「俺はおまえの噛ませ犬じゃない!」(注2)と喧嘩を売ってからの大ブレイク…といったプロレスファンならずともおなじみの長州伝説が詳細に検証されていく。

 さらに全日本プロレスへの殴り込みと新日本プロレスへの出戻り、現場監督としての辣腕、史上最悪の団体「WJ」設立の実状などにも切り込んでいる。しかし全編を通奏低音のように貫くのは、在日韓国人としての心境告白だった。

プロレスという在日社会

 長州力が在日韓国人二世で、本名が郭光雄(通名・吉田光雄)であることは、本人の口からも何度か語られてきた。しかし「差別への反発で強くなった」的な従来の言葉とは違って、この本での長州は何とも弱気な姿を見せる。

 冒頭で紹介した小学生時代のエピソードに加えて、元横綱の北尾光司と試合出場を巡るトラブルを起こした時のことも、以下のように告白している。

「(北尾が)“うるせー、この朝鮮野郎”と(言ってきた)」
「ズキューンってくるんですよね。その一言で軀(からだ)から力が抜ける。うん。こう前に足が出ないような……。(略)喩え方が分からないんだけれど、常に何か違和感のある言葉」

 新日本で現場監督として絶大な権力をふるい、レスラーやマスコミを怒鳴り散らしていた傲慢な顔。バラエティ番組で滑舌の悪さを小馬鹿にされつつも、ニコニコとしている笑顔。そのどちらでもない「長州力」としての居心地の悪さや、少年時代そのままの不安が見事に浮き彫りにされている。

 とはいえ一方で、北朝鮮から来た力道山が開祖であるプロレス界で、在日系レスラーは一大勢力であることも事実。本人が出自を公言していたのは星野勘太郎、前田日明、キムドクことタイガー戸口(注3)、新日本Jr.戦線で活躍した高岩竜一、インディ団体を渡り歩いた金村キンタローら。また、公表していないレスラーも加えていけば、さらに数は増える。

 そんなプロレス界でトップに上りつめたにも関わらず、安住の地とはならなかったとしたら…出自とは関係なく、長州力の彷徨はずっと続く。それが革命戦士の宿命であり、魅力なのだろう。

(注1)長州力…1951年山口県生れ。ゆえに長州というリングネームに。
(注2)噛ませ犬発言…反乱当日には、この発言は無かったという説もある。
(注3)タイガー戸口…日韓のハーフ。

著者プロフィール

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コンテンツプロデューサー

田中ねぃ

東京都出身。早大卒後、新潮社入社。『週刊新潮』『FOCUS』を経て、現在『コミック&プロデュース事業部』部長。本業以外にプロレス、アニメ、アイドル、特撮、TV、映画などサブカルチャーに造詣が深い。Daily News Onlineではニュースとカルチャーを絡めたコラムを連載中。愛称は田中‟ダスティ”ねぃ

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