慰安婦は「性奴隷」に?日本で進む“言葉狩り”を中国人が警鐘 (1/2ページ)

デイリーニュースオンライン

進行しつつある「言葉狩り」が日本を滅ぼす!?  (C)孫向文/孫向文
進行しつつある「言葉狩り」が日本を滅ぼす!? (C)孫向文/孫向文

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。先月、『中国人が見た ここが変だよ日本人』(青林堂)という書籍を出版しましたが、今回のコラムでも、中国人である僕から見た日本の違和感を書いてみたいと思います。それは、日本で進行しつつあるように見える「言葉狩り」です。

 2015年12月28日に韓国の従軍慰安婦問題に対し、日本側が謝罪し10億円の賠償金を支払うことにより、日韓2ヶ国の政府が合意したことは両国で大きく報道されました。

 しかし2016年に入ると、2人の元従軍慰安婦が訪日し安倍首相に謝罪を求めたり、韓国の光州市では6mもの高さの慰安婦像が製作されるなど、韓国側の抗議活動はむしろ活発化している印象です。

■「従軍慰安婦」を「性奴隷」に変更しろという声も

 日本の左派・リベラル層の一部も今後、日本側が謝罪を継続することを要求していますが、SNSを閲覧していると、その中に「従軍慰安婦」という呼称を「性奴隷」に変更しろと主張する人々が存在することを知りました。

 彼らの意見を聞くと、かつて性行為を強制された韓国人女性たちを正確に描写するために、性奴隷という呼称を使用するべきだと主張しています。さらに日本の知人から、現在の日本では人権団体の主張などにより「障害者」を「障がい者」、「子供」を「子ども」と記載するなど、差別を連想させる表現が次々と封印されつつあることを教えられました。

 これらの事例は、表面上は社会的弱者に対する配慮なのかもしれませんが、僕はかつて中国共産党が行った「言葉狩り」を思いだしました。

 僕が中学生のころ、祖母が手紙を入れる袋のことを「封筒」と呼ぶことに違和感を覚えました。そのことをきっかけに自分なりに調べたところ、もともと「封筒」は日本で作られた漢語で中国に逆輸入されたものであったこと、現在の中国で封筒を表す「信封」という言葉は、共産党政権樹立後に制定された造語であることを知ったのです。

 おそらく、中共と敵対関係だった日本の影響を否定したものでしょうが、他にも多くの言葉が中共政府によって改定されました。たとえば過去の中国では、西洋伝来のものは「洋服」、「洋酒」(ワイン)、「洋楼」(マンション)などと「洋」という文字が使用されていました。上記の言葉は僕の祖母も使っていましたが、現在の中国ではそれぞれ「衣服」、「房子」、「紅酒」と呼称されています。

 中共政府が外国を連想させる言葉を禁じた理由は、共産主義陣営の主導国であった旧ソ連の影響です。1949年に中華人民共和国が成立した際、時の共産党政府は旧ソ連が掲げた「国際共産主義」を国家の理念に取り入れました。この主義は世界を同一、平等化しようというもので、中国で6月1日に制定されている「国際児童節」は、国際共産主義に基づき制定されたものです。

 国際共産主義は「国家」、「人種」間の区別を否定する思想です。そのため共産党政権下の中国では、日本で作られた漢語や「洋」という表現が禁止されることになりました。しかし、「電話」、「科学」、「法律」、「憲法」などといった日本製の漢語は、現在の中国でも日本と同じ意味合いで使用されています。

 これらは明治維新後、西洋から伝わった概念を日本で翻訳したものです。このように言い換えが不可能な言葉はそのまま活用しようというところは、中共の「ご都合」なのでしょう。大半の中国人は、普段自分たちが使用している言葉の多くが日本製であることを知らないのです。

 そして同一化の名目のもと書籍や新聞が横書きになり、繁体字(伝統的な中国漢字)が簡略化されるなど、国際共産主義は自国の伝統文化を次々と破壊しました。言葉狩りが最も盛んだった毛沢東政権時代は、「夫」と「妻」という言葉が男女差別にあたると考えたためか、「夫婦」は「戦友」と言い換えられたそうです。

 香港、台湾といった地域では、繁体字が使用され、「同志」、「階級」、「書記」、「闘争」などといった言葉は共産主義を表す言葉として忌み嫌われます。伝統的な文化が根強く残るこれらの地域こそが「真の中華圏」と言えるでしょう。香港や台湾の人々は、中国人たちが使う言葉や粗暴なふるまいを見るたびに、中共政府が中華文化の破壊者であることを実感し、嘆き憐れむのです。

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