破綻したワイン投資詐欺『ヴァンネット』に群がった著名人|やまもといちろうコラム

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Photo by Meno Istorija
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 山本一郎(やまもといちろう)です。投資手法は古典的な買い置きと繋ぎ派です。

 ところで、先日ワインファンドを手がける投資会社『ヴァンネット』が破綻し、派手にやらかしていました。

ワイン投資ファンド「ヴァンネット」が破綻

 そもそも、先日処分されてたんですよね、ヴァンネット。

株式会社ヴァンネットに対する行政処分について

 内容が「ポンジスキーム」と呼ばれる古典的なもので、まあ簡単に言えば投資家に対する配当金を、新規に募集した投資家からの資金で充当していくという自転車操業で頑張る詐欺だということで、巻き込まれた投資家の方はご愁傷様でございます。常識的に考えて、いくらワイン好きでもおいしいワインを飲みながら利殖にも励めるというのは、なかなか大変なことなのではないかなと思うわけであります。

 関東財務局の行政処分内容を見ても、かなりしっかりポンジスキームだろお前という文言が記されており好感が持てます。

 私も、もしもシミュレーションゲームファンドみたいなのがあって、ゲームしながら良いゲームのビンテージ性が上がって資産価値が増えていくという魅力的なファンドがあったなら、騙され覚悟で1万円ぐらい突っ込むかもしれません。

 で、このヴァンネット破綻においては、そのヴァンネットというワインファンドの存在を世間に知らしめた、著名なインデックス投資家・内藤忍さんの存在を抜きに語ることはできません。さっそくネットでは、実質的に詐欺同然であったヴァンネットをさも信頼のおける投資先であるかのように喧伝して、詐欺の片棒を担いだとされる内藤さんに対する糾弾の声も多数上がっているのも確かです。

ワインファンドのVIN-NET(ヴァンネット)が破産手続き開始、最もヴァンネットを宣伝していた内藤忍氏は?
ワインファンド業者「ヴァンネット」登録取消処分でもスルーの内藤忍ブログ
内藤忍の罪とは何か―ワインファンド、ヴァンネットが破産
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 で、このヴァンネットに投資して被害を蒙るであろう(たぶん投資したお金は返ってこないので)被害者の方(通称「馬さん」)が、いろんな法的措置を進めているというのでチャットで取材などしてみました。

■”ワインファンド”に名を連ねた著名な面々

「詐欺に引っかかって困惑されてるところをすみません」

「いやー、さすがに怒り心頭です」

「不動産の賃料収入で儲かったあぶく銭が詐欺で消えてしまって感無量です」

「私だけでなく、(自粛)さんや(自粛)さんも被害に遭ったということで」

「どのくらい返ってこなさそうなんですか?」

「私個人は4,000万ぐらいです」

「ざまあ」

「何とでも言ってください…」

「あれ、反発力が弱いですね。煽ってすみませんでした。そもそものきっかけは何ですか」

「内藤さんの著書や講演を聞いたことがあって、不動産投資で参考にしていたのですが、彼がワインファンドとして『ヴァンネット』を薦めていたので手がけることにしました」

「貴殿はそれほどワイン飲む方でしたっけ」

「私は酒を飲みませんが、家内が高級な酒を少しずつ嗜むのが好きで、また買い付けツアーなどしっかりとしたアテンドで海外のワイン事情を知ることができるというのは興味がありまして」

「下戸なのにワイン投資に手を出して失敗して法的措置とか、何の冗談ですか」

「儲かるし、楽しいって感じだったんですよね」

「本当に怒らないとか、マジ凹みしてますね」

「へこんでますとも」

「でも、どういう理由で投資継続していたんですか。途中でおかしいと思ったことは」

「そもそも私は、内藤さんの本を読んだりして影響を受けたのも事実ですが、ヴァンネットに投資している人たちはそれなりに横のつながりがあったんです」

「投資家同士のネットワークのようなものですか」

「はい。なので、私以外の不動産管理業者や、大手上場企業の元取締役など、投資家の繋がりがワインを通じてできるというのは、ワイン投資そのものよりも大事だと思っていた時期がありました」

「結構この界隈で大物とされる(自粛)さんも投資家の一人だってメールに書いてありますね」

「11年に参画された方で、何よりワインがお好きだというので入会され投資もされていたと聞いています。私もこんな著名な方も投資されているのなら、ますます良いファンドなのだと思ってしまった面はありますね」

「でも、利回りの報告書や投資先の細目はあまりきちんと開示されていませんでした。それでも信頼できると思われたんですか」

「(自粛)にある著名なラウンジやワイン貯蔵施設の視察で会員同士で情報交換をしている際には、投資実績が不審だという人もいたんですけど、以前配当は出ていたんですよね」

「このボルドーワインの蔵元や、もともとのワイン所有者から発行されているインボイスに変な点は無かったんですか」

「いや『変だ』といって降りた投資家の方はいました」

「なるほど」

「実際に、この方と内藤さんが内藤さんのバーで話し合っているのに同席したことはあるのですが、私はそのとき『この方が資金に詰まっているだけなんじゃないかな』と」

「結果としてその投資家が正しかったわけですね」

「や、その人は昨年暮れに破産されました」

「ヴァンネット関係なく駄目じゃねーか」

「そうですね。でも、ヴァンネットに投資をしている客層自体はそこまで悪くないんですよ。だからこそ、あの人もやってるならばと安心してしまったんですよ」

「そこに内藤さんも深く関与されていた?」

「実は私自身はそこまで内藤さんと深くお話しする機会は無かったのです。お会いしたのは10回以上ありますが、他にも人がいる場ですし、個人的な付き合いでヴァンネットや投資について話をした経緯はありません」

「じゃあ単に内藤さんは広告塔として担がれただけなんですかね」

「行政処分が出た去年の暮れ前に、財務局から反面その他調査が入ってまして、きな臭いと思われたタイミングで前代表の北田朝雪さんに(自粛)さんたちが弁護士連れて相談にいったことがありまして」

「現代表の高橋淳さんではなく?」

「このあと公判で明らかになると思いますが、後から聞いた話ではこの高橋さんというのはワインに詳しいだけでファンドの実務は何もしていなかったとのことでした」

「じゃあ普通に黒幕がいる話ですね。北田さんはその前にコンサルティングアルファで関東財務局に行政処分を食らって廃業してますよね」

※参考
株式会社コンサルティング・アルファに対する行政処分について

■当の内藤忍氏に問い合わせたところ…

「さすがに投資家もみんな気づいたので、からくりについては調べていってます」

「そんな損害が確定してから調べなくても」

「もっと早く山本さんにも相談するべきでした」

「そもそも、この北田さんのコンサルティングアルファや資産ナビの処分は14年ですよね。その北田さんがヴァンネットの代表だったわけで、おかしいとは思わなかったんですか」

「でもファンドに主体的に関わっていたのは、私の知る限り現代表の高橋さんではないんですよ」

「関東信越税理士会副会長で、ヴァンネットの元取締役の松井由和さんですか」

「はい。この後は、刑事訴訟と民事でやっていくと思うんですけど、被害を蒙った投資家も二種類いまして、どうしてもお金を取り戻したい人と、お金はいいから問題あった人を吊るしてやれという人とがいるんです」

「いい酒飲んだから、まあいいかと」

「そういう感じですね」

「貴殿は下戸だからワイン楽しんでないじゃないですか」

「うるせえよ」

 このように、おかしいと思いつつもいろんな著名人が騙されていたので「たぶん大丈夫だろう」という、まさにロレックスはめてるマルチ商法の勧誘に引っかかる風情の話になっているわけですが、当の内藤忍さんはどうなのでしょう。

 メールで内藤さんに問い合わせたところ、彼からは「代理人とも相談し、当社が書籍やセミナーなどを通じてコンタクトのある個人投資家にご理解いただけるよう、正確かつ適切な情報提供を行いたいと思っています」とのことでした。

 一部懸念されていた「内藤さんがヴァンネットからお金を貰っていたのではないか」という疑惑について、内藤さんは明確に否定。私は一人の知人として、内藤さんには被害者となった投資家に適切に対応して欲しいと願っていますし、彼自身の投資法そのものは決して悪いものでもないので、きちんと公式に釈明をされ、状況のご説明をしていただきつつ前向きに頑張っていって欲しいと願う次第であります。

 それにしても、それなりに名前のある人たちで、内藤さんにしても投資に関する知識は並大抵ではないはずなのに、なぜこんな原始的なポンジスキームに騙されちゃったのでしょう。

 また、北田さんも松井さんも大竹義夫さんも、ヴァンネットに関わって経営で主導したとされる方々はいずれも税理士です。さて、これは大丈夫なのでしょうか。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

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