吉田豪インタビュー企画:渡辺淳之介「BiSのメンバーのなかで一番成功してるのは僕なんで(キッパリ)」(3) (2/4ページ)
■ステージ上は聖域だから客席とは一線を引きたい
──BiSが与えた影響としては、運営&お客さんが目立ちすぎるようになってきたって面もあると思うんですけど。
渡辺 いまウチはもうあきらかに「お客さんは主役じゃない!」って言い放ってるグループだと思うんですけど。リフト(オールスタンディングのライブ会場で客が他の客を高く持ち上げる行為)が禁止だったりとか。あと最たる例だなと思うんですけど、誕生日に近いライブとかになぜかお客さんが演出を加えてくるんですよ。
──そういう文化ですよね、アイドル界は。
渡辺 こないだも「●●さんを呼んでます、ゲストパスを出してください。で、ステージ上に登場させたい」って言われて、「おい、ちょっと待って。なんでステージ上の話をお客さんに決められなきゃいけないんだ!」と。
──ステージ上のことはお客さんに関わらせたくないんですね。
渡辺 ステージはステージ、客席は客席、線は引きたいですね。
──お客さんが暴走するのはBiSによって生まれた文化だと思ってるんですけど、渡辺さんはそこには一線を引きたいわけですね。
渡辺 そうですね。BiSによって生まれたのかもしれないですけど、BiSでも、それこそ「生誕で●●さんを呼んでステージに上げたい」って言われて断ったんですよ。「ふざけんな、おまえらがフロアで何かやることに対して俺らは文句は言わない。だけど、なぜおまえらが勝手に●●さんを呼んでメンバーの生誕を祝わせる演出をするんだ!」って。だから基本的にスタンスは変わってないんですよ。やるんだったらフロア上で勝手にやれ、と。それはたしかにお客さんの自由なんですけど、ステージ上は聖域だっていうことで。たぶん結構セットリストとか伝えちゃうアイドル運営がいるんだろうなと思うんですけど、僕たちは公開したことはないし、BiSのときから徹底してやってはいるんですけどね。
──自由にさせてくれるところがあるから、そういうものだと思ってるんでしょうね。
渡辺 そんなヤツらが売れるわけないじゃないですか。でんぱ組も絶対に教えてないですよ。だから、BiSが弱いものが好きな人たちの集合体だとしたら、BiSHっていうのは強いものが好きな人の集合体にしたいんですよ。
──客層もあんまりかぶってないですよね。
渡辺 でんぱ組とかは多分最初は弱い側だったんですけど、強い側にシフトしたんですよね。だから、こっちじゃないとダメなんだなと思って。
──それが一般に届くようなやり方なんじゃないか、と。
渡辺 はい。あと僕を正当化するわけじゃないですけど、だったらもっとエクストリームに追い込まないと僕みたいにはならないと思うんですよ。それが正解かどうかは別として、僕がいまこの状況にいられるのはBiSがエクストリームなことをやってきたからなので。いい勉強させていただいて、いい踏み台になってくれたのがBiSで。でも、僕は常に言ってましたからね、BiSのメンバーにも「これはおまえらがジャンプするための踏み台なんだから、常に考えろ。おまえがこのあと何をするのか」。それこそ寺嶋由芙も、ゆるキャラのタレントになりたいって言ったんで、最初はOTOTOYの連載を彼女にあげてそれをやらせてあげて。で、彼女はすごい頑張ったのでゆるキャラ大使みたいになれた。僕的には一応そういうものは与えてるんですよ。逆に「OTOTOYで連載をやりたい」って言ったテンテンコは締切を守らなかったんで、それは潰したんです。締切を守らないヤツはいらないって。僕はBiSのメンバーのなかでは一番気持ちよく踏み台にしたと思う。
──ちなみにBiSのラストライブには行くべきだって由芙さんを説得したこともあったんですよ。
渡辺 ああ、やっぱりダメだったですか?
──全然ダメでしたね。
渡辺 全然ダメなんだ。ホントにあいつも超いいヤツだなと思ったんですけど、ちゃんと花出してくれて。だから、その花もちゃんとみんなが客席に入りやすいエレベーターの一番前に置いてあげたんですよ、宣伝してあげようと思って。花を出すぐらいだったら来ればいいのになって思いますけどね。まあ、それはこっちの理論なんでなんとも言えないですけど。
──由芙さんとしては「向こうがちゃんと公式な場で謝罪しない限りはありえません」みたいなことでしたね。
渡辺 何を謝罪しなきゃいけないのかわからない(笑)。なんか、やっぱりいけないことがあったんだな。
──確実にあったんだと思いますよ!
渡辺 おもしろかったですよ(笑)。頭いい子だと思ってたんで、そこまで追い込んじゃったんだなとは思いましたけどね。