金正恩氏「血と恐怖のシナリオ」第二幕が開いた (1/2ページ)
北朝鮮の金正恩党委員長を支え権力の頂点に君臨してきた支配階層のなかで異変が生じつつある。建国の父である金日成主席の時代から仕えてきた大物政治家の息子が不自然な形で解任されたというのだ。
「高射銃」で人間をミンチに金正恩氏は独裁体制を構築するために、多数の幹部を粛清・処刑してきた。たとえ朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の高級幹部であろうと、時には人間をミンチと化する残忍な処刑方法で、恐怖心を植え付け、体制固めを行ってきた。
こうした中、比較的安泰だったのが抗日パルチザンの血筋だった。
北朝鮮は社会主義体制を標榜しているが、実体は金日成氏を始祖とする「王朝国家」だ。その金王朝を支える一大勢力が日成氏とともに抗日パルチザン闘争を繰り広げ、建国後も政権を支えた人脈、抗日パルチザンの血筋である。いわば北朝鮮の「赤い貴族」たち。
抗日パルチザンの第1世代は、金日成・正日氏に仕えた。金正恩氏は第2世代、そして第3世代が支えていくと見られていた。その第2世代を代表する人物が崔龍海(チェ・リョンヘ)氏だ。金日成氏の盟友でもあった崔賢(チェ・ヒョン)氏の息子ということもあり、正日・正恩氏に仕えてきたが、この人物、北朝鮮国内での評判はすこぶる悪い。
北朝鮮一のブランド好きで派手な生活を好むタイプと知られ、度重なる不正事件を引き起こした。それだけでなく、権力を盾にして美貌の芸能関係の女性を性の玩具にするなどのスキャンダラスな醜聞に濡れたことすらある。
それでも崔龍海氏は、抗日パルチザンの血筋ということから、金正恩体制下でしぶとく生き残ってきた。その一方で、北朝鮮では知らない者がいない第1世代の超大物の息子たちが解任されたというのだ。
韓国の大手紙・朝鮮日報系のTV朝鮮によると、防衛相にあたる人民武力部長(現人民武力相)も務めた呉振宇(オ・ジヌ)氏の息子三人が2015年以後、全員就いていた地位から解任されたというのだ。
呉振宇氏は、1933年から金日成氏とパルチザン活動を繰り広げ、長らく金日成・正日氏に仕えてきた。1995年に死亡するまでの19年間も人民武力部長を務めた。