『ラ・ラ・ランド』のもうひとつの見方…夢を追うことの功罪を考える (3/3ページ)

デイリーニュースオンライン

 繰り返しますがセブは偏屈者の社会不適合者です。それを承知の上でキースは彼を説得し、彼の技術を求め、彼を受け入れた。それは表面的に見れば「セブの夢を脱線させた」と言えるかもしれない。しかし別の見方をすれば、「セブという人間を認め、本人も自覚できなかった形で彼の自己実現を助けた」のです。

 世の中を見渡してみれば、優れた才能を持ちながらそれを適切に発揮できない人間のなんと多いことか。そんな人達の、本人すらも自覚できていない可能性を見出し、導き、実際にサクセスさせる。セブにとってキースはやはり素晴らしい友人に違いありません。

 一方で「夢」というものは、原動力となるエネルギーを人に与えもするけれど、その人の可能性を無意識のうちに縛り、限定するものなのかもしれません。夢を叶えるサクセスストーリーでもある『ラ・ラ・ランド』を見て、こんなことを思うのもどうかという気がしないでもありませんが、やはり「夢」は危険も孕んでいる。別の形での可能性をみすみす逃す恐れがある。

 商業音楽で活躍するセブは本当にカッコ良かった。たとえ本人の夢とは違っていても、傑出した才能には収まるべき席があるのだという希望を示してくれる。『ラ・ラ・ランド』はそんな映画だと僕は思いました。

著者プロフィール

作家

架神恭介

広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『ダンゲロス1969』(Kindle)

「『ラ・ラ・ランド』のもうひとつの見方…夢を追うことの功罪を考える」のページです。デイリーニュースオンラインは、ラ・ラ・ランドアカデミー賞映画連載などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧