ソーシャルゲームで再び吹き荒れる”返金仮処分”とその実情|やまもといちろうコラム (1/2ページ)

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Photo by Pixabay(写真はイメージです)
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 山本一郎(やまもといちろう)です。いまだにポケモンGOやってるんですが、移動しなければすることもないので、パソコンに向かっている間はサブのスマホゲームを物色しては、壁にぶち当たってアンインストールする日々であります。困ったものよ。

 そんな中で、昨年騒ぎになったCygames社の看板スマホゲー「グランブルーファンタジー」の広告不実記載事件後、MCF(モバイルコンテンツフォーラム)、CESA(コンピューターエンターテイメント協会)、JOGA(オンラインゲーム協会)が各々独自のガイドラインを打ち出し、傘下企業にこれを遵守させて問題が解決した……はずでした。

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 そうこうしているうちに、OURPALM社が提供していたとされるソーシャルゲーム『KOF'98』で騒動が勃発。また、スクウェア・エニックス社が提供する『星のドラゴンクエスト』でも返金訴訟が発生する一方、かねてからの定番ゲームとして長らくユーザーに愛されていたガンホー「パズル&ドラゴンズ」やCygames「グランブルーファンタジー」などでも広告による射幸心煽りで過剰にガチャを回してしまったユーザーからの返金要請が出る始末です。

 もちろん、これらの返金は未成年であれば問答無用で返金されるものですが、成人してからガチャに銭突っ込んで、言われたように思ったものが出なかったから返金しろというのは自己責任じゃないかという議論はかねてからあります。しかしながら、昨今はパチンコ業界やカジノ法案(IR法)でもある通りギャンブリング障害、ギャンブル依存症対策をやりましょうという流れに消費者行政も乗っかっているため、そう一筋縄ではいかなくなっている、というのが実情なのであります。

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 実際のところ、昨年来ぼちぼち起きていた返金に関する仮処分が今年に入って大型化、集団訴訟化が進んでおりまして、ゴールデンウィーク前にどうも大きな打ち上げ花火でも上がるのではないかと言われております。話として出ているのはどれも大手ソーシャルゲームで、共通しているのは過剰に煽るガチャ広告を信頼してお金を突っ込んでみたら、実は言われているような仕様ではなかったという不実記載がらみが中心です。

 この仮処分申請、一般には馴染みの薄い方法かもしれませんが、裁判でいわゆる本訴を行う前に裁判所で行われる双方の短期間の話し合いで地位を保全したりすることです。返金を願い出て課金した一部を還付してもらったり、詫び石(パズル&ドラゴンズの場合)を出してもらうということもあります。世間一般に報道されないのは、この仮処分という制度自体が秘匿性の高いものであり、また仮処分で業者側が一部返金や詫び石を出したことを訴え出たユーザーに秘匿することを条件にするというバーターが行われることが背景にあります。

 つまり、業者側が不実記載でガチャを煽ったことを一定の責任で認めて一部返金や詫び石を出す代わりに、そのような訴えがあって仮処分申請で合意したことそのものを外部に漏らさないことを条件にしているということでもあります。

 当然、秘匿条項ですから本来は世間に知られることはないわけですけれども、ここにきて返金訴訟を起こして一部返金を勝ち取った経験のある弁護士事務所が秘匿条項に応じない訴訟を提起したり、明らかに悪質とみられるソーシャルゲームの返金案件でどこからともなく別の事例で仮処分を経験した人物がノウハウを提供し集団訴訟に発展しそうな展開となるなど、徐々に冥界への扉が開きつつあるというのが現状のようです。

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