真木よう子は誰に騙された?アマを装うプロが横行する”コミケビジネスの盲点”

デイリーニュースオンライン

Photo by Lara Cores(写真はイメージです)
Photo by Lara Cores(写真はイメージです)

 真木よう子(34)が8月31日に所属事務所・フライングボックスのサイトに「この度、私が起こしてしまいました事柄により、皆さま方に多大なるご迷惑とご心配をおかけしてしまいました」と謝罪文を掲載した。真木は自主出版のフォトマガジンをクラウドファウンディングで資金調達し、コミックマーケットに出展しようとして大パッシングを受けて、29日にはTwitterアカウントを削除するなど騒動を起こした。

 真木の周辺で何が起こっていたのか、その経緯については第1回の記事を、真木が”騙された”とした人物の手口については第2回を参考にしていただきたい。今回は真木を追い込み、とことんまで平謝りさせた「コミケビジネスの裏側」にメスを入れたい。

■コミケがタレントの物販会場化? 続々と進出する”芸能人”に困惑の参加者

 真木がフォトマガジンの販売ルートとしてコミケを選んだ背景には、昨今の芸能人によるコミケ進出の成功があると言われる。

「2016年の夏コミにはT.M.Revolutionの西川貴教(46)が出展して同人誌とグッズを頒布している。また小林幸子(63)も5884組(コバヤシグミ)というチームで2014年から出展し、CDを頒布。一番の成功者は叶姉妹で、今年8月のコミケではハードカバーで箔押し付きのフルカラーの冊子を販売してます。それ以外に一般参加では有吉弘行(43)や渡辺麻友(23)、厚切りジェイソン(31)の姿も目撃されています」(週刊誌記者)

 コミケは毎年3日間で60万人の来場者を記録する大イベントだ。今年の叶姉妹の成功を受けて、次回に向けて何組かの芸能人が「物販」目当てに動き出したという情報もある。元太田出版の編集者・北尾修一氏が真木を使って仕掛けようとしたのは、このコミケ来場者の購買力がターゲットだった。

■サブカル界のディーバはなぜオタクに嫌われた?

 では、なぜ当初から「マンガ好き」を公言し、Twitterでも丁寧なリプライで神対応とまで言われた真木がここまでコミケ周辺で嫌われたのか。単に芸能人だからという訳ではない。一方では、叶姉妹が8月の夏コミに6時間待ちの長蛇の列を生み、小林幸子も”ボスキャラ”と言われ愛されている。コミケ事情に詳しいマンガ編集者はその差を次のように説明する。

「一番の理由はあからさまに”カネ儲けの匂い”がした点です。元々コミケの理念は”非営利のアマチュア”が発足当時からの基本でした。借金して印刷してる参加者も多い中、話題作り先行のCAMPFIREで知名度を使って800万もの資金を集めるのは反感を買って当然です」

 フジテレビで主演を張る女優なら印刷代くらいのリスクは自分で負うべきだと誰しもが思うはずだ。だが、800万円とは言わないまでも”手弁当”を望んでいた真木には経費を被る覚悟はあったという。結局、「誰かの儲けを出すため」にバジェットは膨らんでいったのだ。

■アマチュアを装ったプロがオタクで金儲けしようとした?

「そもそも周りが”薄い本”を売るのを脇目に、芸能人の威光と言わんばかりにオールカラー・320ページにする必要がどこにあるんでしょう?『そんなの出版社から出せよ』というのが、昔からの参加者の真っ当な声です。わざわざ鈴木心らのプロを使ってマガジンスタイルの体裁を整えたのも、付加価値分を上乗せした高い価格設定にするために見える。アマチュアを装ったプロが金儲けしようとコミケを利用したことがすぐに透けて見えてきました」(同編集者)

 ちなみに叶姉妹はオマケ付きのフルカラー冊子を定価2000円で販売し、買った3000人全員にサイン(事前)した上、グッズが売り切れた後も無料で名刺を1万人に配っている。かたや、北尾氏が企画した真木のサイン入り本は2万円からの価格設定であり、受ける印象がまるで違う。真木ほどの筆まめなら、写真だけカメラマンが撮り、自分のテキストを載せればミニマムの予算は何分の1にも抑えられたはずである。

■ブレーンがオタクの購買力をアテこんだのがバレた?

 また、あるカルチャー誌編集者は「オタクとサブカルの近親憎悪も大きい」と分析する。「どちらもマイナーな作品を愛する点で共通するのですが、オタクたちが格好を気にせず娯楽として享受するのに対し、サブカルはとにかくオシャレさにこだわり、文化として扱いたがる。その辺でオタクはサブカルが大嫌い。真木は自身はオタク気質だとしても、巷間の評価はサブカル寄り。気取った顔でズカズカと聖域に入られるのが心情的にムカついたというのも根底にあると思います」

 同氏によれば、叶姉妹や小林幸子は王道エンタメなのでオタクの許容範囲なのだとも。この両者が「降臨」という言葉で表現されるのに対し、真木は「見下ろしている」印象を持たれたようだ。今回の黒幕とも言われる編集者の北尾氏は「コミケならばオタクを使える(利用できる)」と周囲に吹聴していたとされるが、敏感なコミケ参加者はその思惑を見抜いていた。

■業界っぽさが嫌われる時代。アマチュアを偽装したプロが金儲けする?

 テレビ局や芸能界など、古い悪習やその業界でしか通用しない特殊なしきたりといった”プロっぽさ”が嫌われる時代である。大手芸能プロの威光を忖度したテレビが、お茶の間の支持を失っていったのも”プロ”特有の建前に視聴者がウソを見出したからである。

 そんな中、プロたちはアマチュアを装ってビジネスをしようとしている。プロの世界の中心にいる真木はいち早くウソに気づき、プロ(事務所)の手を離れ、一人のアマチュアとして表現の自由を求めた途端、業界ゴロのような人物に騙されて金儲けの道具にされようとしていた。エンタテイメントビジネスはいまネットの前に丸裸にされ、あたらな方向を模索しているのかもしれない。多くのものを失った真木だが、今回の騒動を奇貨として女優としての表現に打ち込んでもらいたいものである。

【短期集中ルポ:真木よう子は誰に騙された?人気女優を利用した”怪しいプロジェクト”の顛末③】

文・麻布市兵衛(あざぶ・いちべい)
※1972年大阪府出身。映像作家、劇団座付き作家などを経て取材記者に。著書は『日本の黒幕』、『不祥事を起こした大企業』(宙出版)など多数あり。
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