【チェ・ゲバラ、死の真相】見せしめにされたゲバラの遺体 (4/4ページ)
50年前、ゲバラはその遺体を意に沿わぬ形で公開された。そして、今は今でその場が落書きしつくされ、別の意味で見世物にされていたのだ。
呆然として、突っ立っていると、後にいた男がひやかすように私に声をかけた。
「おまえも記念に名前でも書けよ」
演歌歌手の鳥羽一郎に似た、粗暴そうなその男は、私がその日、雇っていたタクシーの運転手。無邪気な彼の行動に悪気はまるでなさそうであった。
無言の私に対し、運転手は続けた。
「ゲバラは私たちの英雄だよ。彼のお陰でたんまり儲けさせてもらってるからな」
彼は相変わらず無邪気な様子で、そう言った。そんな彼に私の戸惑いの色はまるで眼に入っていなかった。(写真/文・西牟田靖)
参考:「ゲバラ最期の時」戸井十月/「チェ・ゲバラ 旅、キューバ革命、ボリビア」伊高裕昭/「増補版 チェ・ゲバラ伝」三好徹