【プロ野球】今季、神宮球場でもっとも声援を受けたの大松尚逸……ではなく広島のあの選手!? (2/2ページ)
■代打・新井への声援は「敵ながらあっぱれ」
今シーズン、大松への声量は「ライトスタンド一」だっただろう。ここで「神宮球場全体」にしなかったのにはわけがある。ビジター球団ながら最も大きな声援を集めた選手がいたのだ。もちろん体感だが、それは7月7日の広島戦で登場した新井貴浩の打席だった。
ヤクルトにおける「七夕の悲劇」として記憶されることになるその日の試合。勝負を決定づけたのは、広島・新井による代打逆転3点本塁打だった。
8対6とヤクルト2点リードで迎えた9回表2死一、三塁の場面。一発がでれば逆転というシチュエーションで新井が登場。このときの声援は、レフトスタンドから三塁側内野席を越え、一塁側内野席までの全員が大声を張り上げていた、ように見えた。ビジターチームではあるが、まさにホームのような感覚。この大声援にきっちりと本塁打で応える新井。まさに、「これぞプロ野球」というシーンだった(ヤクルトファンにはまったくおもしろくない展開だったのだが……)。
恐らく、これが今シーズンの神宮球場でもっとも声量が大きく、盛り上がったシーンだったのではないだろうか。広島ファンがユニフォームを着て一塁側内野席に侵食している問題はある。そして、最下位チームのファンが優勝チームに対して発する言葉ではないのかもしれない。だが、このシーンだけは「敵ながらあっぱれ」という言葉がぴったりだった。
プロ野球はシーズンが終わると徳政令のように借金が0となる素晴らしい制度がある。51個の借金ももうすぐチャラだ。来シーズンは気分よく上位争いを行い、ヤクルトファンがヤクルトの選手に送る声援がもっとも大きくなることを期待したい。
文=勝田聡(かつた・さとし)