世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 ★第299回 移民法 (2/3ページ)

週刊実話

短期的には、
「2号の業種がかなり絞り込まれているため、移民政策には当たらない」
 と、強弁して「蟻のひと穴」を開ける。その後、何十年もかけて穴を拡大していく。グローバリストや構造改革主義者のいつものパターンだ。しかも、特定技能1号は、単に「技能実習生」をスライドさせ、在留期間を延ばすだけの制度にすぎない。

 何しろ、技能実習生として3年以上の経験を積んだ外国人について、「特定技能1号」への試験を免除するという“抜け道”をすでに政府は示しているのだ。実に露骨である。

 要するに、今回の移民法は、特定技能1号で、
「技能実習生を、現状のまま、低賃金奴隷的労働者として雇用し続けたい」
 という経営者のエゴイスティックな欲求を満たすと同時に、将来的には「特定技能2号」で日本を移民国家化するという、二重の意味で非人道的、非国民国家的な法律なのだ。

 しかも、移民を雇用したとして「日本人の所得を引き下げない」ための工夫等は一切ない。日本人は、今後も移民と「低賃金競争」を強いられることになり、実質賃金は低下を続けることになる。

 現在の日本は、少子高齢化に端を発する生産年齢人口比率の低下で人手不足が深刻化している。本連載で繰り返している通り、人手不足下における「生産性向上のための投資」こそが、経済成長と「国民の豊かさ」をもたらす。

 何しろ、実質賃金とは中長期的には生産性向上以外に上昇する術がない(短期的には、労働分配率の引き上げで上昇させることが可能だが)。

 長引くデフレ、つまりは「ヒト余り」に苦しめられた日本国が、人口構造の変化により、ようやく生産性向上、実質賃金上昇のチャンスを迎えた。この「豊かになる絶好のチャンス」を潰すのが、移民政策であり、経営者の「低賃金の奴隷的な労働力がほしい」という邪な考え方なのである。

 移民法ならぬ出入国管理法案は、衆院における審議時間がわずか15時間であった。安全保障関連法案の審議時間が100時間を超えていたことを思うと、あまりの「短い審議」にがく然とせざるを得ない。

 出入国管理法は、安保法以上に日本国の運命を決定的に変える。しかも、突っ込みどころが満載だ。

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