極限で問われる武士の真価!テロに屈せず人質も見殺しにしない源頼信が示した「兵ノ威」とは(下) (3/5ページ)

Japaaan

汝ニ童ヲ突セテナム、我レ否見(えみ)マジキ。我ガ心バヘハ自然(おのづか)ラ音ニモ聞クラム。慥ニ投ゲヨ、彼奴」

刀を捨てて、人質を解放すれば、命は助けてやる。

そうは言われても、刀を捨てたら、約束を反故にされてしまうかも知れない。

盗人は暫し逡巡しましたが、結局は頼信を信じることにしました。

「ありがとうございます。頼信様がそう仰せなら、どうして背くことがありましょうか」

【原文】「忝(かたじけな)ク、何(いか)デカ仰セ事ヲバ不承(うけたまはらで)ラ候(さふら)ハン。刀ヲ投ゲ候フ」

そう刀を投げ捨てると、息子を解放したのでした。

「今度こそ、まっとうに暮らせよ」

さて、頼信は家来たちに命じて盗人を捕らえて引き出させました。

大切な息子を殺そうとした極悪人ゆえ、親孝は斬り捨ててくれようと息巻きますが、頼信はそれを制して言いました。

「こやつはこの頼信を信じて息子を解放したのだから、約束を反故には出来ない。そもそも盗みをはたらくのは貧しいからであり、人質をとったのは助かりたいからであって、憎む事でもない。結局、息子は無事だったのだから、今回ばかりは赦してやる。道中、何か入用な物はあるか?」

【原文】「此奴、糸(いと)哀レニ此ノ質を免シタリ。身ノ侘シケレバ盗ヲモシ、命ヤ生(いかむ)トテ質ヲモ取ニコソ有レ。悪(にく)ガルベキ事ニモ非ズ。其レニ、我ガ「免セ」ト云ニ随テ免シタル、物ニ心得タル奴也。速(すみやか)ニ此奴免シテヨ」、「何カ要ナル。申セ」

こう聞いて、盗人は感涙にむせぶあまり、何も言えなくなってしまいます。

そこで頼信は家来に命じます。

「よし、こやつに食糧を少しくれてやれ。

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