たった一人で織田軍を足止めした歴戦の武者・笠井肥後守高利の壮絶な最期【中編】 (2/4ページ)

Japaaan

……さて、三人は勝頼公を救うことが出来るのでしょうか?

勝頼公を我が馬に乗せ、自分は敵を食い止める!

「おう肥後守よ、生きておったか!」

「笠井殿が助太刀なれば、千人力じゃ!」

高利の加勢に、勝頼公の伝右衛門と惣藏は大喜びですが、高利は勝頼公に早急に退却するよう急き立て、馬が動けなくなった事情を聴くなり自分の馬から飛び降りました。

御屋形様、それがしの馬にお乗り下され!……伝右衛門と惣藏も、早う行け!」

思ってもない申し出を受けた勝頼公は、俄かに動揺してしまいます。

「そのような事をすれば、そなたの命はなかろうに!」

甲州騎馬軍団、かつての雄姿。歌川芳虎『元亀三年十二月味方ヶ原戰争之圖』明治七1874年

馬は武士にとって足であり、中でも人馬一体の機動力こそがその精強さの基(もとい)となる甲州武者が馬から下りることが何を意味するか、知らぬ高利ではない筈……しかし当然の如く、高利は覚悟を決めていました。

「命など、大義の前には軽いものです。我が死をもって主君代々の御恩に報いて御覧に入れます……ところで、それがしには子が一人おりまして、もしご無事に戻られた暁には、お傍に取り立てて頂けると……」

【原文】……命は義に因(よ)りて輕(かろ)し、一死以て君恩に答へ奉らんのみ、臣一子あり事平(たいら)かば、幸(さいわい)に御取立(おとりたて)下(くだし)置かれたし……
『長篠軍記』武田方の陣容及び両軍の大戦 より。

「……相分かった。

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