直木賞作家も舌を巻く『十二国記』のスゴさ (3/4ページ)

新刊JP

でも子どもの頃に一番繰り返し見たということで『ドラえもん のび太の宇宙開拓史』と答えたら悔いは残りません(笑)。

――先ほどのミステリのお話と似ているところがありますが、『ドラえもん』もいつの間にか見ていて、いつの間にか好きになっている類の作品かもしれません。

辻村:そうですね。だから、『ドラえもん』のひみつ道具で何が好きかとか、さっきみたいにどの映画が好きかという話題で初対面の人同士であっても盛り上がれる。みんなが『ドラえもん』にまつわる何かの思い出を持っていて、そういうところにも国民的漫画の凄さを感じます。

『ツナグ』も実際にはあり得ない不思議な設定の話ですが、そうした設定を書くのに抵抗がないのも、自分が『ドラえもん』で育った影響が大きいと思っています。『ドラえもん』の中に出てくる「スコシ・フシギ」はあくまで日常と地続きな場所にある。非日常的な設定にきちんとルールがあって、私たちが自分の身近に不思議な世界を感じられるようになっているんですよね。

――『十角館の殺人』についてはいかがですか?

辻村:さっきお話ししたように、子どもの頃はジャンルに無自覚に本を読んでいたのですが、はっきりと自分がミステリ好きだと自覚したのはこの本がきっかけだったと思います。

小説でしかできない表現のミステリに出会ったことで、「なんてすごいものを読んだんだろう!」と興奮して、読後、自分の部屋の中をうろうろしたのを覚えています(笑)。綾辻さんの本に出会っていなければ、今のような形で自分が小説を書いていることはなかったでしょうね。

この本に出会ったことをきっかけに、綾辻さんが薦めているミステリを読むようになり、自分の中に『十角館の殺人』を中心にした読書の地図みたいなものが一気にできていった。今回の『ツナグ』にしても、何か大きな事件が起きるわけじゃなくても、どの話にも誰かの秘密や著者としての企みがあります。ミステリ以外のジャンルのものを書く時でも、これまで読んできたミステリで培われた文法で自分は小説を書いていると感じるんです。私がかろうじてミステリ作家を名乗れるのは、『十角館』と綾辻さんのおかげだと思っています。

――『リバーズ・エッジ』についてもお願いいたします。
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