わたしたちが知らないスーホの白い馬の真実と当時のモンゴル (6/8ページ)

心に残る家族葬

「満蒙開拓団」の夢を忘れられなかった大塚、または満州に渡って日本に戻ってきた多くの人々が「求める」伝説を採集する。そしてそれが、「満蒙開拓団」を知らない戦後生まれ以降の日本人が抱いてきた、二度と戦争を起こさない、平和で友好な関係構築のための「アジア理解」に加え、「現代人が忘れてしまった素朴で根源的なありよう」へのノスタルジーと結びつき、「児童/生徒教育にふさわしい」として、教科書に採用されてきた。そこにはもちろん、何の「権益」も存在しないだろうが、モンゴルの「実際」はともかく、先に挙げたモンゴルの民への「思い」を、未来を生きる子どもたちに「継承すべきもの」と捉えられてきたのか。またはそれらは完全に忘れ去られ、今世紀から世界規模の潮流となっている「グローバリズム」「多文化共生」の文脈の中で、「文化文明とは全くかけ離れた生活をしている素朴な民」も存在する「多様な世界」に思いを馳せよう…という新しい「意味」が付与され、「読まれる」「味わう」ことが求められているのだろう。

■モンゴル国で語られている馬頭琴起源伝説 フフー・ナムジルとは

ちなみに、モンゴル国で語られている馬頭琴起源伝説は、『フフー・ナムジル』というものが一般によく知られているという。この話は、著名な叙事詩の歌い手で映画俳優でもあったナ・ダギーランヅ(N. Dagiiranz、1930〜2014)が1957(昭和32)年に馬頭琴の弾き語りで初披露されたのが始まりだ。

昔、モンゴル草原に、フフー・ナムジル(「カッコウのような美声の持ち主」という意味)という名の美しい青年がいた。フフーは兵役のために険しい山々を経巡る中、1人の美しい女性と恋に落ちた。その女性は天女だった。

2人は仲良く暮らしていたが、兵役が終わり、フフーは故郷に帰ることになった。天女はフフーを引き留めたが、故郷には年老いた母親がひとり、彼の帰りを待っていたため、戻らねばならなかった。そこで天女はフフーにジョノン・ハルという黒い馬を贈った。

ジョノンはとても速く走れるばかりでなく、翼を持った、不思議な馬だった。ジョノンの背に乗って、フフーはいつでも天女と会うことができた。

そんな中、フフーの集落には、彼のことを片思いする女性がいた。

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