小渕優子経産相・辞任劇…裏に潜む検察とマスコミの劣化

デイリーニュースオンライン

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 小渕優子経産相(40)が、10月20日、辞任した。

「観劇会」の会費収入の辻褄が合わず、親族の会社からネクタイやハンカチを購入、政治資金でベビー用品や玩具を買い、下仁田ねぎ代など訳の分からない支出があったのでは辞任もやむを得ない。

 騒動はこれに治まらず、選挙区である群馬の市民団体が、小渕氏を政治資金規正法違反や公職選挙法違反の罪で東京地検に刑事告発する。受理して捜査の流れになれば、「初の女性首相候補」と評されたこともある小渕氏が議員辞職に追い込まれる可能性もある。

弱体化する〝政治権力の監視機関〟

 政治家追及の流れが画一化してきた。

 内部告発やマスコミ取材によって政治資金問題が浮上。市民団体などが刑事告発、それを受けて東京地検特捜部が捜査着手するが、

「報告書に正しく記載したかどうか」

 という点が問題となる。

 小沢一郎、徳田毅、猪瀬直樹、渡辺喜美……。

 最近、特捜捜査を受けた政治家は、いずれもそのパターンで政治資金規正法、公職選挙法に違反しているかどうかが問われた。

 政治資金収支報告書の記載の有無や使い道で攻める方法が定着したのは、不記載も含めて証拠が残るという意味で立件が容易だからだ。逆にいえば、証拠の残らない贈収賄など、政治権力を利用して利益を得るような犯罪は見逃されている。

 かつて特捜部とマスコミ社会部は、一体となって「首相の犯罪」であるロッキード事件や、政治家と高級官僚が新興企業に便宜を図ったリクルート事件を摘発。政官財の癒着にクサビを打ち込んできたが、証拠改ざん事件を起こし国民の信頼を失った特捜部に、今やそのパワーはない。

 しかし、政治権力を乱用する政治家がいなくなったわけではない。震災復興、国土強靭化、東京五輪と、公共工事は目白押しで、政治家やその周辺による利権調整、補助金や助成金の口利き、行政への圧力や横車は、特捜部という監視役の不在もあって日常化。五輪施設については、「新国立競技場は○×先生」と、差配役が決まっている。

 検察弱体化をカバーするのはマスコミの役割だが、政治家がすぐに名誉毀損訴訟を起こすようになったこともあり、特捜部の“支え”がない記事は、なかなか書けない。「調査報道」というシステムはあるが、訴訟を恐れるあまりに突っ込み不足で、結果として社会に影響を及ぼす記事になることが少ない。

 そんな利権追及に比べると、政治資金収支報告書という紙に証拠が残された疑惑の摘出はラクである。「観劇会」「ベビー用品」「ブランド品」などは、小渕優子という政治家の権力利用は問えないものの、質は問えるしクビも取れる。

 だから政治家の犯罪摘発は、政治資金規正法違反か公職選挙法違反に限られるようになった。その背景に、「権力の監視役」であるべき検察とマスコミの劣化があることは指摘しておきたい。

伊藤博敏
ジャーナリスト。1955年福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、1984年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力では定評がある。『「欲望資本主義」に憑かれた男たち 「モラルなき利益至上主義」に蝕まれる日本』(講談社)、『許永中「追跡15年」全データ』(小学館)、『鳩山一族 誰も書かなかったその内幕』(彩図社)など著書多数
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