【中央競馬・今週の狙い馬】

　来春の桜花賞を占う上でも重要な一戦、2歳牝馬の頂点を決める阪神ジュベナイルフィリーズ（12月14日／阪神競馬場／芝1600m）。コース改修後は素質馬の活躍が目立つレースとなり、キャリアよりも潜在能力の高さに注目だ。

成長の早い2歳牝馬　本命選びのポイントは？

　ご近所の娘ちゃんの身長が随分と伸びた。この1年は会うたびに大きくなっているような気がする。最初はうれしそうにサイズを報告してくれていたが先日、エレベーターで一緒になったときのこと。「また伸びたんとちゃう？」と訊いたら「そんなわけないやろ～」と笑う。「不思議やなあ。このまえまで1年生やったのにな」。「そんなわけないやろ～」と同じ答えが返ってきた。来年は中学生になる。確かに小学校の6年間は長く感じたものだ。彼女が体感している時間と僕とはまるで違うものなのだろう。

　姪っ子の成長にも驚いている。幼稚園児の頃から暇さえあればひとりでお泊りにきてくれていた。中学生になるとさすがに回数は減り、今年の春に2年ぶりに我が家へ宿泊。すっかり落ち着いて、色白で背が高く手足が長い。駅まで迎えにいった嫁さんは「べっぴんさんにならはって気がつかへんかったわ」と言う。すれてはおらず、まじめで優しいのは一緒。それにしても色黒で男の子みたいだった2年前がうそのようである。ガラケーの待ち受け画面に彼女が登場して以降、基本的に予想は好調です。

阪神コース改修後は「マギレ」がなくなった

　娘ちゃんの成長を短期間、姪っ子のそれを長期間と捉えてみる。旧阪神競馬場で施行されていた阪神JFへのアプローチは娘ちゃん方式でOK。だが、広大な馬場に改修されて以降は姪っ子作戦で臨むべきではないかと考えている。

　2006年暮れの開催から現在の馬場となった。迎えた最初のG1が当レースであり、覇者はウオッカ。その後もずらりと歴史に名を刻む牝馬が勝ち馬に名を連ねている。2歳牝馬にとって阪神の芝1600mがいかに厳しいステージか。表現を変えれば、クラシックや古馬になってからも活躍が期待できる馬に熱視線を送る必要があるということだと思う。

　一昨年、僕はアユサンに本命を打った。4番人気で7着に敗れたが、翌年の桜花賞でもやはり◎をつけた。7番人気の低評価ながら鮮やかに優勝。阪神JFで敗退しているのだから説得力にやや欠けるが、桜の女王となる力量をすでに保持していたと解釈してもいいのではないか。そういう視点で当レースにアタックしてみたい。

人気が割れて旨味十分　ダノングラシアスが狙い

　スケールの大きさを伝えてくるのはダノングラシアスだ。ストライドが大きく、重心の低い走法。持続力あふれるスピードの持ち主で長い直線は望むところだろう。

　唯一、気になる材料がある。2006年以降の勝ち馬はすべて1600mを経験していたが、この馬は過去3戦のいずれも1400m。ただ、流れるようなシルエットを描く体型や脚質から今回の条件をクリアできるのではないだろうか。データはヒントであり、答えではない。覆せる素材がいるからこそ変わっていく。

2番手以下も大混戦！ 馬券は手広くマーク

 アルテミスSのワンツー、ココロノアイとレッツゴードンキ。前者は発馬難があるが、大胆な策でロスを封印できる能力を持つ。後者は折り合いという課題がある現状で、強烈な末脚を繰り出している。関西圏で長距離輸送がない状況を踏まえればレッツゴーがやや有利か。

　3年前、ジョワドヴィーヴルに本命を打った。キャリア1戦のなかで数戦分の経験を得たように感じからだ。ロカはジョワドに比べると幼さを覗かせるが1800mの外回りコースで勝った強みがある。大型だがバランスがよく、重さがない。直線一気の芸当が可能な器だと思う。

　小倉2歳Sの勝ち馬オーミアリスがどこまで成長しているか。同レースで負かした馬のうち2頭がその後、重賞を制した。ホワイトマズル産駒の意外性には度々驚かされているだけに注目したい。

藤村和彦（ふじむらかずひこ）

競馬解説者。1992年から2010年までデイリースポーツ社で記者、デスクとして中央競馬を担当。現在は、週刊『競馬ブック』誌上での「藤村和彦のインタビュールーム」連載、ラジオ関西「競馬ノススメ」（毎週土曜16時30分〜17時）レギュラーなど、フリーで競馬予想、競馬解説、コラム執筆などの活動をしている。

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（Photo by JRA）