報ステ「古賀の乱」…背後にテレ朝会長の思惑

デイリーニュースオンライン

写真は番組HPより
写真は番組HPより

 テレビ朝日の看板ニュース番組「報道ステーション」で、3月27日に起きた「古賀の乱」が、今も波紋を広げている。

 古舘伊知郎キャスターが、中東情勢について意見を聞くと、元経済産業省官僚でコメンテーターの古賀茂明氏が突如、

「テレビ朝日の早河(洋)会長などの意向で、今日が最後の出演」

 と、切り出し、「官邸のバッシングを受けてきた」と、続けた。

 突然の事態に焦りながらも古舘氏は、

「今の話は承服できません。4月以降も機会があれば出ていただきたい」

 と切り返したものの、古賀氏は、

「古舘さんは『申し訳ない』と、おっしゃった。全部、録音している」

 と詰め寄るなど、生番組にしても珍しいバトルが展開された。

 この問題を報じた産経新聞や読売新聞が、「いかがなものか」という“穏当”な論調だったのに対し、大阪のテレビ番組『朝生ワイド す・またん!』で司会を務める辛坊治郎氏が、3月29日、番組のイベントで「古賀さんが出てくれたら面白い」と述べるなど、騒動は簡単には終わりそうにない。

早河会長の“政権への擦り寄り”に起因か

「古賀の乱」はなぜ起きたのか。

 謎を解く鍵が、「早河会長の意向」というくだりである。

 テレ朝は朝日新聞社系列であり、歴代社長は朝日新聞から迎えていたが、2009年、初めてプロパーから社長に就任したのが早河氏だった。「報道ステーション」の前身である久米宏キャスターの「ニュースステーション」の初代プロデューサーとして評価が高かった早河氏は、「数字の取れる番組作り」に注力、ゴールデンタイム(19~22時)で視聴率1位を成し遂げるなど実績を残した。

 しかし、朝日新聞色は消せない。昨年7月、新社長には朝日新聞編集担当上席執行役員の吉田慎一氏が就き、早河氏は会長となるが、朝日新聞社内には「強過ぎる早河の権限を削ぐべき」という動きがあった。

 それを跳ね除けて代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)の地位を確保した早河氏は、政権の後ろ盾が必要と意識、もともと親しかった安倍晋三首相との関係を深めた。早河―吉田体制が確立した直後の昨年7月4日、早河会長は吉田社長を伴って、公邸を訪れて首相に新社長を紹介している。

 古賀氏は、早河会長の「安倍政権への擦り寄り」が、反原発を鮮明にする「報道ステーション」の路線変更を及ぼしたと認識。それがチーフプロデューサーの異動、朝日新聞の恵村順一郎コメンテーターの退任、そして「古賀切り」につながったと、読んだ。

 批判はあるが、古賀氏が意地を張り、最後に報道番組の裏の権力構図を見せたのは、それはそれで功績と言えるのではないだろうか。

伊藤博敏
ジャーナリスト。1955年福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、1984年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力では定評がある。近著に『黒幕 巨大企業とマスコミがすがった「裏社会の案内人」』(小学館)がある
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