隣国であることに感謝!? 日本の“危機管理”における北朝鮮の役割|やまもといちろうコラム

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北朝鮮が騒々しいが……
北朝鮮が騒々しいが……

 やまもといちろうです。どちらかというとタカ派です。

 先日の臨時閣議で、一斉に「集団的自衛権」も盛り込んだ防衛関連法案が決まりました。訪米しての議会演説、さらには日米新時代みたいな演出から日米防衛体制の確保、日米安保の再確認および強化、そして歴史的な転換点とも言える安保政策の前進ということで、一連の安倍政権が取り組んできた最重要課題のひとつが着地したことになります。関係各位は本当にお疲れ様でした。

 そんな晴れ舞台の堂々たる日本外交の成功を導いてくれたのは、明確に「中国が仮想敵といわずにここまでロジックが作れた」こともひとつの要因としてあります。たとえば、相互監視におけるグレーゾーン事態、重要影響事態は、明確に中国との領土紛争でのアメリカ軍の介入も踏まえた自衛隊出動のあり方を再定義するものであって、紛れもなくアジアでの米中対立において日米安保体制の受益者たる日本の立場と責任を明確にしたものです。

北朝鮮が隣国であったことに感謝!?

 しかしながら、表向きのロジックは「北朝鮮の核・ミサイル開発など、日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増している」。この前、若き独裁者が、居眠りした軍ナンバー2をなんとなく見せしめで高射砲による銃殺刑に処したりしている国が隣にありまして、彼らは何をしでかすか分からないという意味においては危ないっちゃ危ないんですが、そんな日米同盟を強化して安全保障体制を根本から強化するネタとは程遠いわけであります。人畜無害ではないけれど、そこまで酷い危機は引き起こす能力はないだろうというレベルです。

 建前上は名指しで「中国が怪しい」と言うことなく「なんか北朝鮮が面倒だし怖いんで」というエクスキューズでいけちゃうのは素晴らしいことでありまして、たぶん外側に侵攻するよりは内側に倒れてしまうであろう北朝鮮が隣国であったことに感謝したいと思ったのは今回が初めてです。たぶん、北朝鮮の脅威というものはそう簡単には現実のものにならないという点で、管理された危機の代表格であり、三国志でいえば、ある意味で「張遼が来るぞ」と言っておけば子供がとりあえず泣き止む的なポジションであると言えます。

 もちろん、日本にとってテロ対策の要であったり、サイバー攻撃の踏み石であったり、地下銀行経由のブラックマーケットの入り口であったり、この前も関連組織の長のお子さんが微妙な理由で逮捕されたりしていましたが、そういうことはしっかり監視しやるべきことはしっかりやっていけば良いと思います。

 願わくば、北朝鮮の人たちにも日々の豊かな暮らしができるような施政があって欲しいと思うところですが、残念ながら日本とは国交が正常化してないんですよねー。ざんねんだなー。いやー、ほんともったいない、ざんねんだ。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

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