【米国】「速度無制限」が嘘だとして通信会社に130億円の懲罰的罰金|やまもといちろうコラム

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「速度無制限」が嘘で罰金か
「速度無制限」が嘘で罰金か

 やまもといちろうです。懲罰という言葉にビビッドに反応するほうです。

 ところで、アメリカ大手通信会社のAT&Tが喧伝していた、無線通信端末の「速度無制限」が、実は速度制限されていたとしてアメリカFCCが1億ドルの懲罰的罰金を課す予定であると言うニュースが流れてきました。

FCC、AT&Tの「無制限」データプランに罰金1億ドルの裁定

 まさかと思って元ネタも見物に行ったんですが、本当に裁定としてやらかしていたんですね。消費者保護の観点から、欺瞞的取引の疑いが濃い場合は当局が消費者に代わって懲罰的な賠償を課すのはアメリカでは日常茶飯事なのですが、FCCは先月も他の大手通信であるVerizonとSprintに対してそれぞれ9000万ドルおよび6800万ドルを支払わせているんですね。AT&Tは反発しておるようですが、証券系各社のアナリストが速報をどしどし打っている内容はどれも「AT&Tは株主代表訴訟を恐れてFCCに反発のポーズはとっても、最終的には受け入れざるを得ないだろう」とにべもない内容ばかりで結局はごめんなさいするほかなさそうです。

 ここで彼我を比較してはいけないのでしょうが、我が国ではつい最近ワイモバイルの305ZTで、突然速度制限をかまして大炎上したのが記憶に新しいところです。

案の定大炎上、ワイモバイルの「Pocket WiFi 305ZT」使い放題キャンペーンに3日間で1GB制限が課されたワケ

ワイモバイル、「無制限」謳い販売したWi-Fiルーターに、突如「3日間1GB制限」を掛けて炎上。

 もちろん、ワイモバイルも無闇矢鱈に理由なく速度制限したわけではないのでしょうが、一応は無制限を謳って客集めした先に制限ですから、みようによっては欺瞞的取引だとして騒ぎが広がるのは不思議ではありません。

 また、ワイモバイル以外でもWiMAX2+でも速度制限を突然実施し、これまた炎上しました。

なぜWiMAX 2+は速度制限の実施で「炎上」したのか

 しかしながら、日本にはこの手の消費者行政で消費者に成り代わって多額の懲罰的罰金を課すこともなければ、消費者団体からクラスアクションを起こされて大規模裁判に発展することも少ないわけです。アメリカと日本とどっちが良いかという比較は意味はないものの、もう少し日本もルール遵守のための消費者行政の強化は必要なのではないかと思う次第です。

 一方で、最近では中立性の問題、すなわちインターネットは誰のものかという議論も再び浮上するようになって来ました。つまり、通信業者が顧客確保のために使い放題のサービスに打って出ても、たくさん帯域を使うヘビーユーザーに多くのトラフィックを奪われるだけで、全体の採算や利便性には繋がっていないのではないかという指摘は各所であります。

 さらには、無線通信の効率化を推し進めるにも限界が生じ、最近では次世代通信規格の「5G」関連の設備投資に負担が大きくなると見られ、有線やケーブルテレビといったラストワンマイルが再び脚光を浴び始めそうだという観点もあって、おのおのの業界なりに持つ課題はたくさんあるのだなあと感じました。

 アメリカの動きもきちんと見据えながら、日本もあるべき消費者保護の枠組みや行政について考えるべき時期にさしかかっているのではないでしょうか。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

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