安藤忠雄、森元首相…新国立競技場の戦犯たちが垂れ流す無責任発言

デイリーニュースオンライン

アンビルド(建設されない)の女王に頼んだのがそもそもの間違いだった
アンビルド(建設されない)の女王に頼んだのがそもそもの間違いだった

 長く沈黙を守っていた建築家の安藤忠雄氏が、初めて対外的に口を開いたのは、7月11日、日本テレビ系列の『ウェークアップ!ぷらす』だった。辛坊治郎キャスターに、こう語ったのだという。

「何でこんなに増えてんのか、分からへんねん」

 2520億円に膨らんだ新国立競技場のデザイン案を採用したのは、安藤氏を委員長とする国際デザインコンクールの審査委員会である。

「分からない訳はない」

 これまでの五輪メーンスタジアムの総工費の5倍から8倍という高額施設に対し、読売新聞が行った世論調査で8割以上の人が「計画を見直すべき」と答えるなど、反対が渦巻いている。そんななか、建設主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は、7月7日、将来構想有識者会議を開き、承認を得て、ゼネコンと契約を結ぶなど工事をスタートさせた。

 見切り発車は国民感情を逆なで、改めて高額の原因となった英国在住の建築家ザハ・ハディド氏の案を採用した安藤氏の責任を問う声が起こり、それに対して安藤氏は「分からへん」と答えたわけだ。だが、「分からない訳はない」と、専門家は口を揃える。

 流線形を多用する斬新なハディド氏のデザインは、施工技術が難しい。その分、予算が跳ね上がり、実現される率が低く、「アンビルド(建設されない)の女王」と呼ばれてきた。もちろん安藤氏は周知しており、コンクールでハディド案を採用する時、「課題がたくさんあり、話し合いが必要」としていた。

 高過ぎることは、2013年10月に判明。これまでの間に、抜本的な修正や撤退による仕切り直しは可能だったはずなのに、「オリンピック前の2019年10月開催のラグビーワールド杯に間に合わせろ!」と、五輪組織委員会会長の森喜朗元首相がハッパをかけていたこともあり、誰もいい出せなかった。

 有識者会議の場で、森元首相は「これは国家プロジェクト。これからの日本の運動競技場の聖地にしよう」とぶち上げて会議をリード、反発を強める国民の声は耳に入っていない様子だった。

 2520億円は、とても採算の合う建造物ではなく、しかも五輪後に開閉式屋根と可動式の1万5000席を取り付ければさらに数百億円がかかり、そのうえ維持費は1000億円を超える。経済合理性の合わない施設の建設を始めたのは、原資が税金で自分のハラを傷めないからだ。

 文科省もJSCも建築家も大物政治家も、誰も責任を取らず、「決まったことだから」と、流れに身を任せて恥じない。日本のギリシャ化が、間違いなく進んでいる。

伊藤博敏
ジャーナリスト。1955年福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、1984年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力では定評がある。『黒幕』(小学館)、『「欲望資本主義」に憑かれた男たち 「モラルなき利益至上主義」に蝕まれる日本』(講談社)、『許永中「追跡15年」全データ』(小学館)、『鳩山一族 誰も書かなかったその内幕』(彩図社)など著書多数
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