中国人が見た国会前デモ「アジア平和に安保法案は不可欠」

デイリーニュースオンライン

左が著者、右が変態唐辛子さん
左が著者、右が変態唐辛子さん

 7月17日、僕は、中国人風刺漫画家の王立銘先生(ペンネーム:変態唐辛子)と一緒に国会前にデモに行きました。この日のデモの目的は、中国国内で拘束されている200人以上の人権弁護士の解放を求めるためです。

 中国大使館ではなくて、国会を選択したのは、国会の前にはたくさんの人が集まっていて、多くの人にこの問題を訴えることができると考えたためでした。

 僕らは漫画家なので、この日のためにそれに見合ったイラストも描いてきました。

 国会前に到着すると、至るところに警察官がいて、「どういう目的で何をするのか」と尋ねられました。王先生はあまり日本語がわからないため、警察官の姿を見ただけで逮捕されるのではないかと怖がっていましたが、この警官部隊は、デモの市民を誘導したり、対立する主張のデモ隊同士が喧嘩をしないように配置されていました。彼らは非常に丁寧な話し口調で、市民を案内していました。

 この日、これだけたくさんの警察官が配置されていたのにはワケがありました。7月16日、安全保障関連法案の衆院通過が決定しましたが、それに対して、反対派のデモが大規模に行われていたからです。

シールズのデモに衝撃

 国会の周辺には、安保法案に反対する群衆がひしめいていて、時間を追うごとにその数は増えていきました。そんな中、僕らが見て衝撃を覚えたのが、「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動、シールズ)」という団体でした。

 これは、10代後半から20代前半の大学生が中心となって組織した反戦の団体で、「PEACE NOT WAR」などの英語のプラカードを掲げて行進しています。オシャレな子も多くて、女の子もたくさん混じっていました。まるで渋谷や原宿で遊んでいてもおかしくない子たちというか、大学のイケてる子たちのサークルのメンバーのようにも見えました。

 その子たちは軽快なリズムに合わせて、ヒップホップのようなラップ口調で拡声器で歌っていました。その内容は、「安倍はやめろ」「自民党って、なんか感じ悪いよね」「×●▽□×?%$(よくわからない英語。たぶん参加者たちもよく分かってない)」といったもの。

 こうした斬新なデモに衝撃を受けたのは事実ですが、正直に言えば、何だか、そのスタイルも言葉も軽薄だなあと思いました。僕の目には、大学サークルの野外ライブというか、遊びの延長のように見えたのです。でも、彼らには若さや勢いがあり、多くの左側の民衆を惹きつけていましたし、マスコミもたくさん集まっていました。

 ちなみに、僕も王先生も、安全保障関連法案の衆院通過には大賛成です。中国共産党に関しては、「PEACE」「NOT WAR」「×●▽□×?%$」などと英語で叫んでいてどうにかなるような相手ではありません。

 それはウイグルやチベット、そしてフィリピンに対する中国の態度を見ていればお分かり頂けるでしょう。例えば、拳銃を持って、力によって不法を働いているような輩に対して、「僕らは平和主義だから、そんな君たちのことも理解するよ」なんて言っていると、どんどんいいように搾取されちゃいますよ。

 今、日本がアメリカとがっしりと手を組み、中共というならず者を牽制することは、戦略的に正しいことだと思います。「PEACE」「NOT WAR」というのは、今回の安全保障関連法案によって成し遂げられるものだというのが、僕と王先生の認識です。

 僕らは、今回、中国の人権弁護士の解放を求めてデモをしましたが、今や弁護士だけに限らず、チベット人にしてもウイグル人にしても、民主活動家にしても、たくさんの中国人が中国共産党によって虐待を受けています。僕らは、日本という国にそういう中国の不正行為に対して明確にNOと言える国、更に言えば「アジアの警察」になって欲しいのです。アジアの平和を守るためには、相手が怯むような「力」が必要なのです。

 「SEALDs」の子たちはまだ学生だから仕方ないのかもしれませんが、今後は、僕らが過ごしてきた中国という国の本質を見た上で、そこから更にもう一歩、考えを進めて欲しいと願ってやみません。SEALDsが望む「平和の実現」というのはもちろん否定されるものではありません。

 ですが、その方法論として、「9条の遵守」と「アメリカとの関係強化」では、どちらが日本という国を守ってくれるものであるか、そして、アジアの平和を実現させるものであるかは、僕ら中国人の目から見れば火を見るよりも明らかだからです。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)

(構成/杉沢樹)

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