お金も家族も友人もいない…凶悪化する“下流老人”の犯罪事情

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貧困が凶悪化に拍車をかける(写真はイメージです)
貧困が凶悪化に拍車をかける(写真はイメージです)

 暴走老人による凶行が止まらない。

 71歳の男が、東海道新幹線のぞみの車内で乗客を巻き添えにして焼身自殺を果たしたのは6月30日。その記憶も醒めやらない7月29日には、長崎市淵町のアパートで住人女性(52)が刃物で胸を刺されて死亡する事件があった。逮捕されたのは、同じアパートの2階に住む84歳の無職男だった。

「男は以前から女性の長女につきまとい行為を繰り返してトラブルになっていた。昨年2月には、女性の部屋の玄関先でこの長女にわいせつな言葉を吐いたとして書類送検されている」(捜査関係者)

 地元メディアなどによると、事件は福祉施設が運営するアパートで起きた。身寄りもなく狭い部屋で鬱々とした毎日を過ごしていた男は、孤独の末に犯行に及んだものとみられている。こうした高齢者による犯罪に巻き込まれるリスクは年々上がってきている。

検挙者数が初めて10代を上回った

 警察庁の調査によれば、全国の警察が今年上半期に摘発した刑法犯のうち、65歳以上の高齢者は2万3656人で、14~19歳は1万9670人に達した。年齢層別に統計を取り始めた1989年以降では、初めて半期ベースで高齢者が10代を上回ったのだ。

「高齢者の犯罪は、凶暴化の傾向も見受けられる。摘発された高齢者のうち、粗暴犯は前年から10%以上増え、そのうち殺人や強盗などの凶悪犯が占める割合も増加している。」(全国紙社会部記者)

 その要因のひとつとして指摘されているのが、高齢者の貧困問題。いわゆる「下流老人」の増加である。

 フライデー8月14日号(講談社)は、カネも家族も友人もなく、最底辺の生活を強いられる彼らの悲惨な暮らしぶりをルポしている。

 同誌によれば、45歳まで大手百貨店の正社員として働き、年収1200万円を手にしていたある男性(60)は、病気になった父親の介護のために退職を余儀なくされたことが転落のきっかけだった。

 再就職したスポーツ用品店は5年で辞めざるを得なくなり、トラック運転手などの職を転々。2009年には住んでいたアパートを家賃滞納で追い出され、路上生活を送るハメになったという。

 普通の暮らしを送っていても、ちょっとした綻びから人生が暗転するというわけだ。われわれにとっても決して他人事ではない問題なのだ。

 格差の拡大によって犯罪リスクも上昇する。暴走老人がさらに増えるのは間違いないようだ。

(取材・文/浅間三蔵)

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