かつて私が住んでいた団地の真裏には「警察学校」があり、団地の廊下越しから見える警察学校のグラウンドをのぞくと、厳しい訓練をこなす警察学校の生徒たちがいた。暑い夏も、寒い冬も、彼らの目つきは鋭かったことを覚えている。
これが、「教場」である。
2013年に刊行された『教場』(小学館刊)は、「警察学校」を舞台にした警察小説の新境地を開いた作品だ。「週刊文春ミステリーベスト10 2013年(国内部門)」で第1位、「2014年 本屋大賞」にもノミネートされた。
そして2月に出版された続編の『教場2』(長岡弘樹著、小学館刊)はファンならばどうしても期待が高まってしまうだろう。
■警察官が盗まれると最も困るものは?
「君には警察学校を辞めてもらう」
白髪焦眼の教官・風間は、「退校届」という半引導を生徒に渡す。それぞれの生徒に課題を与え、挫折を経験させ、己と闘わせる。そう、警察学校は、必要な人材を育てる前に、不要な人材をはじきだす篩(ふるい)の場なのだ。
初任科第百期短期課程の桐沢篤は、風間教場に編入される。6年間の医学部課程を経て、2年間の研修医の経験を持つ男で、医師から警察官へと転職した珍しい存在だった。
入校から1カ月、警察手帳貸与式で、桐沢は校長から「自分が犯罪者だとして、警察官から物を盗むとしたら何を狙う?」という質問をされる。ほとんどの学生が「拳銃」と答えるこの質問に、桐沢はこう答える。
「警察手帳です」
これは正解だ。警察手帳ほど、犯罪に悪用されやすいものはない。だからこそ、保管は厳重でなければならない。手帳の紛失は即退校となるほど、「警察手帳」は大事なものなのだ。
■桐沢が警察手帳を紛失してしまい…
5月半ばから学校の耐震補強工事のため、「さきがけ第一寮」から「第三寮」へと移らなければいけなくなった。ゴールデンウィーク最終日は、その引っ越しにあてられた。そこで事件は起こる。
警察官が盗まれると最も困るものとは? 『教場2』で描かれるスリリングな世界
2016.03.23 18:30
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