元国連捜査官が見た北朝鮮「ブラックホール」(5)核兵器開発のほうが安上がり

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元国連捜査官が見た北朝鮮「ブラックホール」(5)核兵器開発のほうが安上がり

 北朝鮮は国際社会で孤立している──。そんなイメージを持っている人は多いのではないか。いや、現実はその逆。かの国を生き長らえさせている「武器シンジケート」が世界各国に点在しているのだ。

 前回までは北朝鮮の武器密輸を担う同国最大の海運会社「OMM」と、その背後でうごめく「ハヤト・エミヤ」(仮名)なる日本人について、驚愕の舞台裏をお伝えした。

 今年1月20日、海上自衛隊のP3C哨戒機が、中国・上海沖の東シナ海上で国連安全保障理事会の制裁対象である北朝鮮船籍のタンカーと、ドミニカ船籍のタンカーによる積み荷の受け渡しを確認。中身は不明だが、北朝鮮への輸出が規制されている石油関連製品の可能性がある。洋上での積み荷の受け渡しは「瀬取り」と呼ばれ、北朝鮮による制裁逃れの手段としてアメリカなどが警戒を促していた。そんな中での大胆な取引に、国連安保理による監視がさらに強化されるのは必至だ。

 さて、今回からは第二弾として、世界中に広がる北朝鮮の武器ネットワークの実態を暴いていきたい。インタビューに答えるのは、引き続き国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会「専門家パネル」として、16年まで4年半にわたり北朝鮮武器密輸捜査に当たってきた古川勝久氏である。

 ところで、経済的にドン詰まりの状態が続くと言われる北朝鮮だが、なぜそこまでしてミサイルや核開発にこだわり続けるのか。その理由の一つが、国際的孤立への対抗策だという。

「北朝鮮による核計画の歴史は古く、50年代にはすでにソ連国内で原子核研究所創設メンバーに加わり、その後もソ連支援の下、80年代には実験用原子炉の稼働に成功しています。ただ、北朝鮮には核の平和利用ではなく、兵器として使わなければならない、ある事情があった。それが米韓との外交交渉だったのです」

 北朝鮮にとって朝鮮半島の統一を目指す韓国とその同盟国であるアメリカは、自国の存在を脅かす相手。そのため、アメリカとの平和協定の締結を目指してきた。だが、朝鮮戦争の平和協定に向けた協議開催を働きかける北朝鮮に対し、アメリカはそれをことごとくはねつける。

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