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【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第6話「いやあ、韋駄天みてえに走ったぜ」
桐紋を白く抜いた花色のれんを分けて、国芳は笑った。
吉原の五丁町(ごちょうまち)を駆け抜けたせいか、汗が吹いて止まらない。三和土(たたき)の土間で框(かまち)に腰掛け足を洗い、額の汗を拭って少し熱を冷ましてから二階の奥の部屋に上がった。
相変わらず風流な青竹の連子窓からは、ようよう登り始めた朝陽が薄っすら差し込み、床に光の放射線を描き出していた。
二人差し向かって座ると、
「おみつ。・・・・・・」
国芳は袂を探り、いきなり何かを差し出した。
「はいこれ、」
「なあに」
「たんぽぽ。・・・・・・」
「あっ、かわいい」
差し出された愛らしい花を見て、みつは思わず相好を崩した。