葬儀離れや葬儀の簡素化が進む近年において、見かける機会も少なくなってきたものの一つに「守り刀」がある。既に死んでいる故人を守るための刀とは何か。かつての日本人は刀剣や弓といった武具に対して、ただ人を殺める武器以上の神秘を抱いていた。
■葬儀の風習「守り刀」
日本の葬儀では故人の遺体を北枕に寝かせ、枕元や胸元に守り刀を置く風習がある。守り刀は納棺の際にも置かれ、現代では金属類など一部の材質を除き、副葬品として遺体と共に火葬されることになる。守り刀の由来や作法は地域によって様々であり一概には言えない。魂の抜けた遺体を魔物や化生の者から守るための魔除けという意味もあれば、冥土への旅支度のひとつで、旅に向けての身の守りとの伝承もある。旅支度には足袋を履かせたり、三途の川の渡し賃の六文銭などがお馴染みである。唯一、浄土真宗では守り刀は置かれない。真宗では阿弥陀仏の慈悲によって死後は即、極楽に往生すると説くため、身の守りは必要ないのである。いずれにしても守り刀は「故人を守るためのもの」という概念の下に置かれる。刀のもつ身の守りとしての特性が守り刀になり、武士階級以外にも広まったのではないか。
■刀は武士の魂
「守り刀」というが刀は持ち主の命を守るための武具である。同じ武器でも槍や弓と違い、常に腰に差し歩くことができる刀は太平の世となった江戸時代においても平時における武士の身の守りであった。俗に「刀は武士の魂」と言われる。刀は武士の魂、つまり命を守るためのものだからである。そして身体的な命だけではなく、武士としての誇りを守るためのものであった。
■刀は武士が武士であるための武具だった
戦闘階級である武士たる者が丸腰でろくに抵抗もできず、無残な最期を遂げたとしたらこれほど無念なことはない。同じ死ぬにしても果敢に戦って果てるならむしろ名誉といえるかもしれないが、なぶり殺しにされるのでは面目が立たない。入浴中に惨殺された源義朝(1123〜1160)の、今際の際の絶句が「せめて木太刀ひとりありせば」であった。志半ばにして死ぬことの無念はもちろん、戦場で散る武士の本懐を遂げられない無念さが伝わる最期である。
刀は傷つけるだけでなく守るための武具 葬儀の守り刀と武具の神秘
2021.02.09 19:00
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