北朝鮮の国会に当たる最高人民会議の常任委員会総会で、違反薬物の取り締まりを強化する法律が採択されたのは今月1日のこと。とはいえ、北朝鮮の刑法には、以前から違反薬物の密輸及び取引罪や、栽培製造罪などが設けられており、使用で5年以下の労働鍛錬刑が科されるほか、製造と密輸の最高刑は死刑だとされている。つまり、すでに極刑が下される法律がある中で、なぜ新法の施行が必要だったのか。その背景を北朝鮮の事情に詳しいジャーナリストはこう語る。
「北朝鮮では故金正日総書記の指示により、90年代から外貨獲得のため、国を挙げてケシの栽培などを行ってきたといわれています。こうした薬物売買と武器売買などの不法行為で得た収入は、年間約5億ドル(約550億円)に上り、その利益は最高指導者の金総書記と一部エリート層の資金源になっていたとされる。ところが、国境を接する中国当局の取り締まりが強化され、また経済制裁の長期化もあり、製造した薬物が行き場を失ってしまった。さらに、不足する医薬品の代用品として使われたことで、一般庶民が容易に手にできるようになり、あっという間に中毒者が急増してしまったというわけです」