ここのところ起訴された万引き犯に対して異例の判決が続出している。執行猶予中の身であるにも拘らず再犯に及んで逮捕、起訴された複数の女性被告に対して、保護観察付きの執行猶予判決が相次いで下されているのだ。通常であれば、執行猶予中の者が起訴されて有罪になれば実刑は免れないはずであるが、どうしてこのような判決が出されているのだろうか。
その判決理由を読むと、一定の収入があるのに万引きを繰り返してしまうのは万引き依存症(窃盗癖、クレプトマニアともいう)や摂食障害などといった病気の影響であると裁判所が認定しており、それを自認した被告が治療に前向きな姿勢を見せていることが大きく評価されていた。つまり、執行猶予中に逮捕、起訴されたとしても、病気の影響による行為だと主張し、盗みを繰り返さないための治療を受けていることが認められれば実刑を免れるというわけだ。
確かに、多額の金を所持しているにも拘わらず、金を使いたくないという歪んだ倹約心から万引き繰り返す者は多く、摂食障害を理由に万引きする者も珍しくない。いくら食べても吐いてしまうので食べ物を買うのが馬鹿らしくなり、日常的に大量の食材を万引きしてしまうのである。しかし、大胆かつ巧妙な手口を用いて万引きを繰り返す彼女達の悪質な犯行を目撃している立場からいえば、万引きしてしまうのは病気の影響だという主張を受け入れ、彼女達を弱者の如く保護する司法の姿勢には賛同できない。
今夏、窃盗癖(クレプトマニア)を治療する病院での取材を許された筆者は、入院治療されている女性(二回の服役歴を持つ執行猶予中の再犯者)にインタビューする機会を得た。今までに二回服役している経験から、刑務所にいっても万引きは止められないと断言する女性は、自分が万引き行為に及んでしまうのは拒食症やうつ病、強迫神経症、離人症などの影響に違いなく、ここで治療すれば止める自信があるので更生する機会を与えてほしいと自身の裁判で主張している。
今までの万引き歴を尋ねると、その回答に絶句した。ここ十数年、金を出してモノを買ったことはないと言い放ったのである。捕捉された経験も三十回を超えており、被害届が出されなかったり、病気を理由に不起訴となる事案が多く、二回の実刑で済んでいるのだと自慢気に話している。