【DMM亀山敬司講演@船井総研】第2回:「自分たちの資金と組織で、業界の一番を取れるビジネスを」

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【DMM亀山敬司講演@船井総研】第2回:「自分たちの資金と組織で、業界の一番を取れるビジネスを」

 2015年9月、国内最大手のコンサルティング会社“船井総合研究所”の東京本社で印刷業界向けに、とあるセミナーが開催された。講師として招かれたのは、DMM.comグループ会長・亀山敬司氏。「異形の急成長企業DMMトップが語る経営者の仕事の仕方」と題した講座に登壇したのである。異業種の経営者を前に、氏が語った辛辣な提言とは?その模様を3回に分けてお届けする。今回は第2回「自分たちの資金と組織で、業界の一番を取れるビジネスを」

【DMM亀山敬司講演@船井総研】第1回:「衰退業界での生き残りかたとは?」

危機感を持っていても、危機はある日突然現れる

亀山会長(以下、亀)もうちょっと僕の友人の話をすると、僕が25年位前にアダルトを始めた時に、パッケージの印刷を頼んだんです。うちの成長に伴ってパッケージの印刷がどんどん来るから、彼の印刷屋も大きくなって自社ビルも建てた。ただその頃に彼に言ってたんです。「うちは今後東京に行くし、コストを下げるために1〜2年経ったら印刷の見積もりも入札にするから、その時に負けないように頑張れよ」と。

ウチは当時からテープ会社や運送会社は、毎年入札を繰り返して変えていた。でも印刷っていうのは一番変えにくかったんです。過去分のパッケージ版を預けていたりとかいろんな流れがあるんで1社に長く任せた方が都合良かった。でね、その2年後に入札をしたんですけど、東京の大手印刷会社が出した価格が今までの価格の半分くらいだった。それで新しいパッケージ印刷の全てを大手に変えたんです。その後、彼が「下請け会社を変えたので価格を合わせられる」と言ってきたけど、後の祭りだった。これが何かって言うと、彼は受注先にも発注先にも、なぁなぁになっていたということです。

印刷屋に関わらず、地元密着型の会社ってのは多かれ少なかれそういうところがありますが、特に印刷屋は学校とか役所とかの出入り業者になってるとなかなか他に移らない。新規の仕事が増えなくても、昔から取引先でなんとかなったりしてる。結果そういうところの仕事が売上の多くを占めていたりすると思うんですよ。そうなった時に、今みたいなことが起きますよ。ある日突然、学校の方から「すまんね、今まで長い付き合いなんだけども、ウチも最近予算減ってつらいんだよ」と。

つまり皆さんは今、漠然とした危機感を持っているでしょうが、実際その危機っていうのはある日突然現れるんです。いきなり売上の半分くらい占めてる取引先で、そういうことが起きる可能性が結構高い。比率が大きくなればなるほど、その打撃が大きいですよ。だから想像してみてください。「この取引が無くなったらどうなるか?」を。それが今なんとかなってるからっていうんで、危機感が足りないことがあると思うんですよ。

もう一つ付け加えるなら、その後、彼はウチの仕事なくなってどうしたのかって話なんですけど、彼は他のアダルトメーカーへ営業に行ったんですよ。女優やおっぱいをキレイに映すとか、そういったノウハウがあったので。ウチでの実績をもとに東京に売り込みに行ったんです。まあ「それは良かったね」って話なので応援してたんですけど、ただ「支払いには気をつけろよ」とは言っといたんですね。でもそれがだんだん2ヶ月、3ヶ月と延びていったらしいんです。「いやいや、これ以上延ばしたらマズイよ」と忠告したのに、1年くらい経った時には、半年くらいまで支払いサイトが延びてたんです。で、その後案の定、倒産というか支払いできませんで終わってしまった。

皆さんもそういうことないですか?利益率のいい仕事であれば、どうしても支払いが長くてもやっちゃうじゃないですか。でも、「価格が高くてもいいから支払いサイトを長くしろ」なんて言う会社はロクな会社じゃないですよ。価格がなぁなぁでやってる会社は、支払いもなぁなぁになるし、最後の最後はどっちもダメになる。断りきれない中で、黒字倒産というのも有り得るんです。それもある日突然にね。

こんな性格なんでね、初対面の方に言いたいこと言ってますけど、もし僕が皆さんのコンサルなら「こうやって努力しましょう」とか励ましになるアドバイスはできますよ。でもそういうのって本当はあまり役に立たず、なんの解決にもならない。だから誠実に言おうと思うと、友人に言ったことと同じ事を言った方がいいのかなぁと。悪いならやめるべきだと。だから・・・。場の雰囲気がだんだん重たくねってきましたね。マズイですねコレ(汗)

アマゾンとかアップルがやってるビジネスだったら最初からやらない

司会 いままでの講演を聞いていると、皆さん印刷業界にいた中で、一番厳しい経験をされてる場じゃないかなという風にすごく思いますね。

亀 前向きにやっていくのは大切だと思いますけど、ただそれを現状の業界の中だけでやるのか?世界を広げてやるのか?だと思うんです。他の業界のことなら船井さんに相談すれば、多分色んな仕事知ってますよ。いろんな業界のコンサルやってるんで。景気のいい業界もいっぱいあるから、たぶん隣の部屋ではもっと派手なこと言ってるんですよ。「これいけまっせー!」とか「新しいアプリ作りましょう!」とかね。印刷屋さん同士が集まってここで話してるより、むしろ休憩時間に隣の部屋に話を聞きに行った方が勉強になると思いますよ(笑)。

司会 今興味があるのってどんな業界ですか? それこそ本当にFXからはじまって英会話、3Dプリンター、ゲーム、太陽光と、いろいろ事業展開されてるかと思うんですが。

亀 今は、イベント系アプリとかバイオマス発電とかVRシアターかな。世の中にはこれから伸びる市場はいっぱいある。ただ自分たちの資金力や組織力と相談して、どのへんなら一番を取れるかっていうスキマに行く感じです。どんな市場でもベスト3くらいに入らないと後々どうせ儲からなくなる。だから、皆さんもやるんだったら、上位には立てそうなスキマを狙うべきです。僕もアマゾンとかアップルとか、大手がやりそうなものはやらないですからね。例えばオンライン英会話。これってフィリピンまで行って、講師雇って、教育して、英会話教える。アマゾンやアップルはそんなアナログで手間の掛かることやらないでしょ。そういうところを狙ってます。

そういったビジネスは地方にもあります。さっきの話じゃないけど、NHKとか見て、東京で流行っている仕事を「俺の地元でもパクっちゃおう!」みたいな感じでも間に合います。そういった土着型というか、外資が来にくい場所っていうのはいっぱいあります。年寄り向けの施設とか、美味しいたこ焼き屋さんとか、そういったものがね。コミュニケーションや味みたいなものは、ITや大手がなかなかクリアできないですから。

機械の性能や価格でなく、職人芸で勝負するべき。

司会 DMM.comは印刷業界に参入はありますか? 今の話でいうとないですね(笑)。

亀 もしDMMでやるとしたらITでお客集めて、既存の印刷屋の方に仕事振りながら広げてくっていうモデルですかね。既にやっているところもありますけどね。でも仮にそれがうまくいったとしても、その後、地元の印刷屋さんとの提携を続けていくとは限りませんよ。売上が大きくなれば、自前で工場を作って効率化してコストダウンやスピードアップに向かうと思います。

IT化が遅れている業界にはまだまだチャンスがあるので、僕も以前「ネットで注文を受ける魚の発送業」を考えたことがあったんです。築地に行って、市場の人たちと提携できたらやろうと思ったんだけど、その時は結局話がまとまらなくてやれなかった。なぜ自分達だけでやれないかというと、専門家の目利き力が必要だったんです。魚の目を見て活きが良いか分かる人がいなきゃできないんです。IT業者は所詮はデータの世界だから、そういう現場の人たちと組まないとできないことはあるんですよ。例えば飲食業でもITは飲食店に客を送るまではやるけど、料理を作る飲食店はやれない。

じゃあその中で印刷業っていうのは、どういった職人芸があるのかって話になるんです。僕は詳しくないけど、もしそれが単なる機械の性能や価格での勝負だとしたら、ITやグローバルの世界では小さな会社は結局最後には外されちゃうんです。いまウチは3Dプリンタやってますけど、海外の大手に値段で勝負するのは大変です。機械代も材料も向こうの方が安いんで。だからサービスの質やスピードや別の価値で戦うしかないんです。

なんだかんだと取り留めの無い話をしましたが、自分のいる業界が衰退しはじめた時の生き残り方は、ITなどでその業界の新しいビジネスモデルを作るか、自分より弱い同業者を吸収するか、さっさとやめて別の成長業種に乗り換えるかってことです。本当は衰退する前にその行動をした方がいいんです。勢いのある時のほうがやり易いですからね。でもまだ間に合います。今からでも決断すべきです(第3回へ続く)。

【DMM亀山敬司講演@船井総研】第1回:「衰退業界での生き残りかたとは?」

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プロフィール

DMMグループ会長

亀山敬司

DMMグループ会長 亀山敬司
石川県のレンタルビデオ店からアダルト、IT業界の大物まで登り詰めた成り上がり実業家。現在はFX、英会話、ゲーム、太陽光発電、3Dプリンタ、VRシアターと多岐にわたる事業を展開している。

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