【ネットニュース編集者によるイニシャル鼎談】羽生結弦の“結婚報道”がPVを稼ぐ理由

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ぶっちゃけトークが展開される
ぶっちゃけトークが展開される

山本一郎×中川淳一郎×漆原直行のイニシャル鼎談vol.2

 2016年は新年早々、大きな芸能ニュースが舞い込み、ネットニュース業界を賑わせている。そこで、ネットのトレンドを知り尽くしたブロガーの山本一郎氏、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏、編集・ライターの漆原直行氏の3人にご登壇いただき、トークイベントを開催。ヤバい箇所はイニシャルで伏せながら、いかにネットニュース読者がゲスな芸能ニュースを好んでいるかを掘り下げてもらった。今回はトークイベントの第二弾「羽生結弦の結婚報道」についてだ。

【ネットニュースの裏側】山本一郎×中川淳一郎×漆原直行のイニシャル鼎談vol.1「ベッキー騒動はネットニュースの救世主」

■サウジ×イラン国交断絶よりも読まれる羽生記事

山本一郎(以下、山本) ベッキー騒動の次は『羽生結弦の結婚報道に女性ファン悲鳴「ゆづは永遠のチェリー」』ですね。

中川淳一郎(以下、中川) 元ネタが女性セブンの記事で、週刊ポストと女性セブンのニュースサイト『ポストセブン』に転載したのが俺なんですよね。内容を端的に説明すると、高校時代の同級生のAさんと交際の噂があって、Aさん本人を直撃。彼女は「そんなことないですよ、うふふ」と否定したという内容なんです。なのにデイリーニュースオンラインのこの記事は、ゆづファンの「ずっと彼には童貞でいてほしかった」とかいうですね、余計な願望を掲載しているもんだから、俺たちのメディアが攻撃されまくっててですね。問い合わせフォームにクレーム殺到という事態です。「ゆづはそんなことしません!」って、知るかよおい、っていうね。

山本 でも結婚報道って書いちゃってるからさ。一人歩きするに決まってるじゃん。

中川 俺たちは、結婚報道なんて書いてないですよ。交際情報って書いたのに。

漆原直行(以下、漆原) このタイトルをつけたのはデイリーニュースの編集部?

中川 そうですよ。勝手なことしやがって(笑)。

山本 この記事は衝撃的だったから、すごいヒットしたんですよ。大手ネットニュースの配信元では、国際的な大ニュースであるはずの「サウジアラビアの国交断絶」の約60倍ものアクセスがあったんです。ゆづの交際報道で多くのユーザーがそちらに流れて、サウジアラビアが国交を断絶しなかったわけですね。

漆原 ネット民的には「サウジとイランの国交問題」よりも「羽生選手が童貞か否か」のほうが重要ってことでしょうか。山本さんは、どういう思いでこの記事を見ていたの?

山本 僕は、いいなと思ったんです。ほらスケート界って汚いじゃないですか。

中川 高橋大輔が、橋本聖子にキスされたりだとかありますね。

漆原 A選手の子供の話とかですか?

山本 それもそうだし。A姉妹の話とかね。そこにフィギュアスケート人気っていうのが出たもんだから、フィギュアスケート業界団体みたいのが出来てきてて、そこは汚いらしい。フジテレビの番組でご一緒してる、司会者のOさんがそのあたり詳しいんですよ。

漆原 そうですね。込み入った話もよく知っておられそうな雰囲気ですよね。

山本 A姉妹の妹が引退するかどうかで大きく報じられたとき、スポンサー周りや協会の金看板であることも踏まえて「彼女はいろいろあるからさ、上とか下とかさ」とか、言うわけですよ。要はそういう業界用語を交えながら、うまい具合に被せて言う。その話聞くと、つくづく汚い世界なんだろうなって思うわけです。その点、羽生結弦はいい子だよなぁ。

漆原 でも、そもそもチェリーじゃないでしょ?

中川 これは記事化する際に非常に迷ったんですが……。とある筋のX氏からの真偽確認不明の「ここだけの話だが……」とオレに耳打ちしてきた情報だと、

山本 あ! やばい! ちょっとそれは置いといた方が、いいかもしれない!

中川 羽生さん、実は〝ピー〟が好きだから。

漆原 言っちゃったよ。

中川 X氏が示した根拠によるとですね、彼は30分以上の取材を絶対に受けないことで知られてるんですって。というのも、31分になると〝ピー言葉〟が出てくるっていうんです。

山本 それはね、本当にヤバい秘密って言われてるんですよ……。

中川 でももしかしたら、女性セブンは好意的な意図で、出してるんじゃないかって思うんです。疑惑を打ち消すために、交際情報を出したという……。

山本 こんなのもありますよ。『優等生・羽生結弦が持つ黒い顔も…? 記者たちが唯一触れない「ゆづタブー」とは?』これは『トカナ』に掲載されている記事。ゆづタブーと題しながら、ゆづタブーはなかったってオチなんですけど、ついに書かれたかと思って見に行った時の興奮と、見た後の悲しさ。

漆原 “高揚”してからの“消沈”って感じね。

山本 残念な感じです。これは釣りですね。まんまとひっかかったって話。

中川 まさか、ゆづの話でも20分引っ張るとは思わなかったよ。

漆原 これまたすみません。まだ話はいっぱいあるのに。

■古市氏の「ハーフ劣化」発言の意図

山本 もう次いきますね。次は古市憲寿さんのハーフ劣化問題。『古市憲寿氏「ハーフ劣化」発言にみるニュースサイト『J-CAST』との混ぜるな危険感|やまもといちろうコラム』

中川 彼は山本さんが出演しているフジテレビ系・『特ダネ!』の仲間じゃないですか。

山本 僕ね、古市さんとほとんど話したことないんですよ。避けられてるんです。

漆原 古市さんから?

山本 はい。山本さんに近づくと燃えるとかで。でもね、一応この記事では古市さんのことを、多少カバーするようなことを書いたんです。もちろん彼は言い過ぎな部分があって、指導教官の先生からお叱りを受けている。

漆原 私の教え子がこんなこといってすみません、みたいな感じでですよね。

中川 しかも、いちいちフェイスブックでね。

漆原 別に詫びる必要もねぇんじゃね? と思ったんですけど。

山本 でもね、彼らは番組が始まる前に「こういう内容で話しますからね」という打ち合わせをやっているわけですよ。その中には、確かにハーフという言葉は入ってたらしいんです。劣化とまでは載ってなかったみたいですけど、外タレは旬が短いというニュアンスでの発言は決まっていた。彼自身が、言いたくて言った訳ではないのは聞いてるんです。

漆原 一応、台本はあると。それに加えてもう一言、「劣化が早い」というようなことを、言っちゃったみたいな話?

山本 そう。ちょっと誤算があったようなんですよ。ただ、そこに喰いつくのが『J-CAST』なんですよね。J-CASTは、おそらく古市さんを炎上キャラにしたいんです。で、フジテレビもそうですが、それ以外のテレビ局でもJ-CASTをマークせよって動きがあって、J-CASTがこういうことを書くことは許さない! みたいなことを思ってるテレビ番組はいっぱいいるんですよ。

漆原 周りから、そんなにマークされている媒体なわけ?

山本 ぶっちゃけ、テレビマンからJ-CASTは嫌われてるんですよ。でも、なんで嫌われてるのかっていうと、J-CASTってそれなりに新聞社を出たOBの人たちが作ってるだけあって、切り口だったり、タイトルのつけ方、煽り方がうまいんですよ。つまりは、こんなにゲスい人たちがいるんだっていうくらいに、ゲスい媒体なんです。

漆原 なるほど。イヤな感じの角度で爪を立てて、えげつない爪痕を残すと。

山本 その標的になったのが、古市さんだったってことなんですよね。

中川 そういう意味では、古市さんが今は一番いいタレントなんじゃないですか?

山本 J-CASTの古市さんの記事は、すごいPVだったんです。

漆原 古市さんだから妙なことを口するのもしゃーねえか、みたいな、「あの人は、そういう芸風の人」と生温かくウォッチしてもらえる枠でもあるんですよね。

山本 テレビでの発言をその部分だけ切り取られたら、そりゃ燃えますわ。で、J-CASTの一番おそろしいところっていうのは、そこからいろんな媒体に配信されていくんですよ。ヤフーニュースとか、ヤフーニュースとか、あとヤフーニュースとか。しかも社会のカテゴリのトップにいくわけなんです。ハーフ劣化とか言われたら、注目が集まるじゃないですか。その結果、4200万PVで大炎上って話ですよ。

vol.3に続く

(構成/デイリーニュースオンライン編集部 写真提供/『ホウドウキョク』)

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プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

プロフィール

ライター/編集者

中川淳一郎

一橋大学商学部卒業後、博報堂CC局で企業のPR業務を担当。2001年に退社しフリーライターに。『テレビブロス』編集者、企業のPR活動、ライター、雑誌編集などを経て『NEWSポストセブン』など様々な、ネットニュースサイトの編集者となる。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)など多数

プロフィール

ライター/編集者

漆原直行

1972年東京都生まれ。編集者・記者、ビジネス書ウォッチャー。大学在学中より若手サラリーマン向け週刊誌、情報誌などでライター業に従事。ビジネス誌やパソコン誌などの編集部を経て、現在はフリーランス。書籍の構成、ビジネスコミックのシナリオなども手がける。著書に『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』『COMIX 家族でできる 7つの習慣』(シナリオ。伊原直司名義)など多数

次回告知/デイリーニュースオンラインPresents『山本一郎・中川淳一郎・漆原直行トークイベント』

【日時】2月4日(月)19時30分スタート(18時30分開場)
【場所】阿佐ヶ谷ロフトA
http://www.loft-prj.co.jp/lofta/

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