少年ジャンプ作家・横田卓馬×架神恭介『ダンゲロス1969』対談 (2/5ページ)
- タグ:
-
漫画
ダンゲロスって誰が主人公かよく分かんないよね
横田「今回『ダンゲロス1969』が講談社から出せなかったのって、やっぱり文章量が多すぎたせいですか?」
架神「あ、いきなりそこ来ますか。そうですね。最近、長い小説は売れないらしくて。ただ、一番大きいのはそこだと思うんですが、視点が多すぎる、場面が変わりすぎる、というのも言われましたね。でも、ダンゲロスは一作目の『戦闘破壊学園』の時から三陣営による群像劇だし、今回もそこは同じだったんですが……」
横田「色んな人が色んな考えで動いてるのが面白いところですしね。でも、読者には読み辛いと思われるんですかね」
架神「実際ありえるとは思います。中学の頃、友人にクーンツの群像劇小説を貸したんですが、『視点の変更が多くて話がよく分からない』って突き返されたんですよ。当時、僕はそんなこと思いもしなかったのでびっくりした覚えがあります。小説を読み慣れてない人には群像劇という時点でハードルが高いのかもしれません」
横田「僕も漫画のダンゲロスを描いてる時に、これはひょっとして漫画を読み慣れてる人じゃないと読めない漫画なのかな、と描きながら思ってました」
架神「どの辺りですか?」
横田「これは僕の責任かもしれないんですけど、まず字が多いですよね。それに視点がくるくる回っちゃうのもあるし。常に主人公を主軸に進むわけじゃないし」
架神「他の漫画は主人公を主軸に進めるものが多いですからね。いや、当たり前ですけど。主人公なんだから」
横田「そうですね(笑)」
架神「でも、ハンターハンターやブリーチも、あんまり主人公視点じゃないですよね?」
横田「そうは言っても、どちらも序盤はゴンや一護の視点で始まってますからね。軌道に乗り始めてから色んな人の視点に移っていくんですけど、ダンゲロスだといきなりじゃないですか。いきなりサブキャラ(友釣香魚)で一話使うところから始まって、香魚が主人公かな? って読者が思ったら、また変わって両性院(本当の主人公)が出てきて、さらにムーっていう主人公っぽいのが出てきて……。やっぱり始めの頃は主人公の話をちゃんと見たい、っていうのが読者の意見だと思います。……でも、架神さん、主人公創るの苦手だって前に言ってましたよね?」
架神「相変わらず苦手ですね……」
横田「『1969』はユキミが主人公だと思うんですが、僕が見た感じではあんまり活躍してないような……」
(注)ユキミは『戦闘破壊学園』における敵陣営『転校生』の一人であり、『1969』においては主人公。
架神「一応ユキミは『学生運動に参加する新人』という立場で、読者と一緒に新しい世界を見ていく、というキャラではあったんです。共感型主人公ってやつですね。『背すじをピン!と』の主人公、土屋くんと同じタイプなんです。彼の活躍は……ねじ込みにねじ込んでも分量的にあれが限界でした……」
横田「まあでも、能力的にもそんなにメインで戦える人じゃないし。『戦闘破壊学園』の主人公の両性院もそんなもんでしたね」
架神「両性院もあんまり主人公っぽくないですよね。ピンチの場面に颯爽と現れて『両性院が来たぞー!』ってキャラじゃ全然ない。彼が活躍したのって裏切り者を見抜いたのと、最後の最後でバトルしただけですし。漫画だと主人公を強調するのは特に大事だと思うんですが、両性院を主人公っぽく描くために横田先生はどういう工夫をしてたんですか?」
横田「表紙の絵とかで真ん中に立たせる! そうしたら主人公っぽくなりますよ」
架神「(笑)」