つまづきを長所に変えて~『ダンボ』のたどった苦難の道(前編):高橋ヨシキ連載2 (4/7ページ)

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ジャンボは鼻でペンを持つと、器用に「×印」をつけますが、これは文盲の人がサインをするやり方です。ジャンボはゾウなので文盲なのは当たり前ですが、配達人のコウノトリは文字がわかるようですから、これはダンボが産まれた環境が裕福でも白人でもないことを示しているとみることもできます(実際はサーカスですが)。1940年、『ダンボ』公開の1年前、アメリカの文盲率は白人では2%でしたが、有色人種では11.5%もありました。
 ジャンボはそれなりに年寄りに見えますが、極端な老婆という感じはしませんから、ここで「年寄りが出産するといえば、旧約聖書に登場するサラ(90歳で息子イサクを産んだと言われる)の引用ではないか?」と勘ぐるのはやめておきましょう。また、子供を授かったほかの動物たちはみな「つがい」なのに反してジャンボは独り身なのですが、これも「さてはキリストのメタファーが」などと勘ぐる必要はないかと思います。全体として見た場合、そういう宗教的な寓意を『ダンボ』に見出すことは不可能でしょう。また『ダンボ』は『みにくいアヒルの子』のアップデート版ではないか、という指摘はつとになされてきたことですが、これも実は的を射ていないのではないか、とぼくは思っています。『みにくいあひるの子』は一種の「貴種流離譚」ですが、『ダンボ』は後述するように、フリークがフリークのままで自らの尊厳を取り戻す話だからです。

「うすのろ太郎」でも大空をかけることができる

 母ゾウのジャンボが白い袋を解くと、中には可愛らしい赤ちゃんゾウがちんまりと座っていました。
 ジャンボはこの輝くばかりの息子を「ジャンボ・ジュニア」と命名します。
 映画『ダンボ』における幼いダンボのアニメーションの素晴らしさには、本当に筆舌に尽くしがたいものがあります。どの場面、どの表情、どの動きを見てもほれぼれします。それにも実は理由があります。『ダンボ』を作るにあたって監督のベン・シャープスティーン(ほかに『シンデレラ』『ふしぎの国のアリス』『ファンタジア』『ピノキオ』など)は予算を抑え、シンプルな映画にすることを命じていました。『ダンボ』の製作時、ヨーロッパでは第二次大戦が始まっており、その影響で『ピノキオ』と『ファンタジア』が思ったような興行収入を得られなかったからです。

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