リングと呪怨の2大キャラが激突!映画『貞子vs伽椰子』を徹底分析 (2/3ページ)

デイリーニュースオンライン

■二大覇者激突に至る美しすぎる論理展開

 本作の特筆すべき点として、貞子と伽椰子が激突に至る論理過程が非常に美しいことが挙げられます。

 vsモノの最大の問題は、世界観の違う二つの作品をどうやって同じ世界で並べて接触させるか、という動機付けでしょう。『エイリアンvsプレデター』はかなり成功した部類のvsモノだと思いますが、あの設定も「無理のない範囲でよく練られている」レベルを脱していませんでした。しかし本作の論理は「無理がない」どころか、「美しい」レベルで構築されています。

 キーとなるのは、貞子の呪いを解くべく除霊を始めた女霊能力者が返り討ちに遭うシーン。そして、貞子の呪いに怯え自殺を図った女の子が自殺前に貞子に殺されるシーンです。本家『リング』にはない追加設定ですが、これで「貞子の呪い遂行を邪魔するものは貞子の攻撃対象となる」というルールが明確化されます。

 一方で、伽椰子は「家に入ったものを攻撃対象とする」。ならば、呪いのビデオを見た者が呪いの家に入ったら……? そう、貞子と伽椰子、二大怨霊覇者のルーリングが激突するのです。貞子も伽椰子も覇者の風格を持つ怨霊なので己のルールを曲げることなどできません。

 呪いは「AをするとBになる」という論理でもあります。霊能力者「常盤経蔵(安藤政信・41)」は「呪いのビデオを見た者が呪いの家に入る」という作戦を通じて両者の論理を操作し、能動的に「論理をぶつけ合い」、論理矛盾による対消滅を狙うのです。

■明らかに白石監督の仕事

 本作は白石監督のオリジナリティが強く発揮された作品と言えます。『リング』と『呪怨』を丁寧に表現している前半部からして、白石監督の色が既にかなり強い。「あ、リングだ」「あ、呪怨だ」と思うと同時に、明らかにリングでも呪怨でもない、白石監督のオリジナリティが発揮されているのです。

 一つにはキャラクターの妙なしたたかさ、逞しさがあります。呪いのビデオの危険性を重々承知しながらも知的好奇心にアッサリ負けて喜々としてビデオを見る民俗学教授や、いじめられっ子に呪いの家に閉じ込められて怪奇現象に遭遇するも、「あれ? この家を利用したらいじめっ子を皆殺しにできるんじゃね?」と考えちゃういじめられっ子など、なんか妙に芯が強い。こんなキャラ、『リング』にも『呪怨』にも出てこないよ!

 いじめられっ子の反撃に遭ったいじめっ子たちが、手に手に石塊を持って呪いの家に乗り込んでいくシーンもスゴイですね! 全然ギャグシーンじゃないのに絵面の凄まじさに爆笑してしまう。ちびっ子たちの身体の小ささと、原始的な石塊を武器として握るギャップ。この「絵的なやり過ぎ感」は明らかに白石監督の作風です。こんな感じで、本作には全くギャグ要素はないのに、あちこちで爆笑してしまう。完全に白石監督の仕事です。

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