ディズニー王国事始め~『白雪姫』がすべてを変えた(1):高橋ヨシキ連載4 (1/5ページ)
あの映画に隠された、禁断の魅力とは? 現代の「神話」の深淵に迫る!
高橋ヨシキのディズニー大好き!
第4回 ディズニー王国事始め~『白雪姫』がすべてを変えた(1)
文・高橋ヨシキ
ヒトラーが愛したディズニーアニメーション1937年、まだドイツではアメリカ産のポップ・カルチャーが大人気を博していました。いや、1937年までは、と言ったほうが正確でしょう。翌1938年、ナチス・ドイツはオーストリアを併合、さらにチェコスロバキアのズデーテン地方をも獲得し、また11月には悪名高い「水晶の夜」(※)事件が勃発したことで、ドイツとアメリカの関係は急速に冷え込みました。これに伴って、ドイツではアメリカ映画やアメリカ音楽を視聴することができなくなっていきました。
(※)「水晶の夜」は、1938年11月9日の夜から翌朝にかけて、ドイツ各地でユダヤ人の住居や店舗、シナゴーグ(ユダヤ教の聖堂)などが次々と破壊・放火された事件のことです。建物だけでなく、多くのユダヤ人が暴行されたり殺害されたりしたほか、大規模な略奪も発生しました。そのとき、破壊されたショウウインドウや窓ガラスの破片が道路に撒き散らされ、月明かりを浴びてきらきらと輝いていたことから「水晶の夜」と呼ばれました。ドイツの警察はこれをまったく取り締まらなかったばかりでなく、ナチス政権は事件そのものを正当化し褒めたたえるありさまでした。「水晶の夜」はまた、ナチス・ドイツがその後のユダヤ人絶滅計画、いわゆるホロコーストへ向かって突き進むことになる大きな転換ともなった事件でもあります。
しかし1937年の時点では、ドイツでもまだアメリカ映画は普通に観ることができていました。その年のクリスマスに、宣伝大臣のヨーゼフ・ゲッベルスはヒトラー総統にミッキー・マウス映画をプレゼントしています。ゲッベルスの日記によれば「クリスマス、私は総統に12本のミッキー・マウス短編をプレゼントとして差し上げた! 総統はいたくお喜びで、素晴らしい贈りものに大変満足しておられた」(1937年12月20日)とのことです。