エンタメ作家・冲方丁の"DV疑惑"に隠された思惑(2) (2/2ページ)
離婚に向けて話し合いをしている彼は、妻側とのやりとりの中で、何か隠さねばならないことがあるようだ。それに該当するからこそ、アリバイ的な部分を書籍化の際、バッサリ削ったということらしい。
■彼が守ろうとしているものでは彼はいったい何を隠そうとしているのか。私が過去に話をうかがった、逮捕経験のある冤罪DV被害者の話が参考になる。
「接見に来た弁護士に言われて知ったのは、通報するだけでは留置所には入らないということ。診断書をとって告訴の手続きを取って初めて裁判所から逮捕状が出て逮捕されるそうなんです。どうするかを決めるのは嫁さんの胸先三寸。つまり、私を留置所に入れるための判断と書類の提出は嫁さんがしてるんです。私と一緒に留置所に入っていた男もやはりDV容疑で留置されていました。奥さんに頭蓋骨骨折という大怪我をさせた、正真正銘のDV夫なのに、彼の方が早く釈放されました。というのも彼、奥さんに反省文を書いたんです。そしたら処分の取り下げが奥さんからなされたというわけ。一方、私はやってませんから反省文なんて書けないわけ。だから10日間、余計に留置されていました」
実際にDVをはたらいた男性がすぐに釈放され、DVを行っていない彼は20日間も自由を失われていたのだ。実際におかした罪よりも、奥さんが許すかどうかによって、身柄が左右されたことが彼の証言からわかる。
■表現と面会を天秤にかけた?奥さんへの怒りをあらわにしつつも、その理由をはっきり言わないのか。名誉毀損の相場である100万円ぐらいなら、彼は払えるだろう。だから奥さんの行為について開示することやその反応についてはへっちゃらなはず。
そうではなく、彼が気にしているのは現在、会えないでいるお子さんのことではないか。
子どもを奥さんに連れ去られた、当事者の男性たちがよく言うのは、「面会させるかどうかは全て妻の意向次第だ」ということである。奥さん側が会わせたくないと言えば、それが通ってしまうのだ。
12年前、歌人の枡野浩一さんが週刊誌や月刊誌に「子どもに会いたい」とあちこちで書きまくったことがある。[『あるきかたがただしくない』(朝日新聞社)に収録]。その後彼は、子どもには一度も会わせてもらっていない。それは、子どもに会えない不条理をメディアで書きまくったことで奥さん側の態度が硬化してしまったのだ。
表現と実生活のはざまで揺れに揺れた末、子どもに会えなくなることを避けるため、冲方さんは、苦渋の選択として、警察や検察、裁判所批判という線で手記を展開することにしたのではないだろうか。彼が今後、子どもたちとの絆を回復することを願わずにはいられない。
Written by 西牟田靖
Photo by 冲方丁のこち留 こちら渋谷警察署留置場