人が動く! 人を動かす! 「田中角栄」侠(おとこ)の処世 第34回 (1/2ページ)

週刊実話

 さて、話を国際会議でのIMF年次総会での田中角栄大蔵大臣の演説に戻す。田中は演説で、わが国も開放経済体制へ進むことは努力はするが、世界各国また日本の政策努力も理解してほしいと主張したものだが、この演説、当時としては異例、何と英語で行ったのだった。
 田中は出発前に大蔵省幹部を前に「オレは英語でやるッ」と“宣言”、田中が英語がうまいとは誰一人信じぬ幹部はむしろ“失態”を危惧し、「日本語でよろしいのでは」と顔色を窺った。しかし、田中は頑として、「いやコレでいくッ」であった。一度言い出したらテコでも動かぬ性格の大臣であることは百も承知の幹部は、不承不承これを認めざるを得なかったということだった。

 こうなると、負けず嫌い、何事にも全力投球で鳴る田中もヤル気十分だった。留学経験があり、英語上手の娘・真紀子(後に外相)にまず大蔵省から渡された英訳の演説全文をテープに吹き込ませ、これを暗唱した。「暗記が一番」が子供の頃からの田中の勉強法であったことは、すでにこれまで触れてあることは読者諸賢ご案内の通りである。
 さて、暗唱勉強をしたところで“仕上げ”である。英語の達人ぞろいの大蔵省の中でも、一、二とされた当時の柏木雄介参事官にも同様にテープを吹き込んでもらい、発言の出来栄えにさらにミガキをかけたのであった。

 当日。日本の演説の順番はスーダンの次だったが、演説時刻が近づくにつれ田中はむやみにタバコをふかし何度も英文を口の中で繰り返したりと、さすがに落ち着かないようであった。同行の大蔵省幹部がふとその演説原稿をのぞくと、英語のスペルの下に鉛筆でカナがふってあるものも多々あり、長いスペルには真ん中あたりで発音を二つに分けてあるなど、苦心の跡がアリアリだった。
 しかし、本番では度胸のよさでは人後に落ちない大臣、ナニワ節で鍛えたシブイ声で、一応、最後までまずは“読み上げ”てみせたのだった。外国人記者団の評にいわく、「とにかく理解はできた」「日本語というのは何となく英語に似ているようだ」というものであった。

 一方、英語演説でいささか調子に乗った田中は、その後に行われたIMF総会終了後の打ち上げパーティーでは、今度はナント“持ち歌”の一つ、村田英雄の「王将」を1曲サービスしたいと言い出した。

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