83歳筆者の〈極私的鑑賞ノート〉(4)...黒木和雄「TOMORROW/明日」に、戦争の理不尽を思う (5/6ページ)

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どうやら、彼の子を妊娠したことは間違い無いようだ。彼の母親を訪ねたが、「見知らぬ人に、なぜ息子の行く先を明かさねばならないのか?!」と逆に突き放され、途方に暮れている。

更に、新郎中川の友人、俘虜収容所勤務の石原継夫(黒田アーサー)は、病状の重くなった若いイギリス兵に対し、医師の加療を求めるが、取り上げられず、その結果、イギリス兵は死亡してしまう。その鬱屈した思いを、気のいい娼婦(伊佐山ひろ子)に慰められたりしている。

こんなごくありふれた、何時の時代にも(現在だって)、何処にでもありそうな、庶民の慎ましやかな生活のシーンが次々に淡々としてスクリーンを流れて行く。ただ一つの異常事態を除いて...。それは言うまでも無く、彼らの翌日の運命「これら当たり前の人々が一瞬にして、原子爆弾から放射される超高温の熱線により焼き尽くされてガス化し、雲散霧消する」ということだ。映画冒頭のメッセージを思い起こして頂きたい。曰く、「人間は 父や母のように 霧のごとくに 消されてしまって よいのだろうか」

広島、長崎の原爆投下による死者は、それぞれ14万人、9万人(投下年1945年中)と言われている。無論、その後原爆被爆による死亡者は更に増加して行くのはご承知の通りだ。

一回の、それも一方的な戦闘行為で、これほど多数の死者が出たのは、筆者の知り得る限り、他に?思い出すことが出来ないのだが...。

現在、起きている世界中の紛争の中でも、最も頻繁に報道されている最悪事態のシリア空爆の死者でさえ、数十人、多くて数百人のオーダーである、と記憶する。
元々、数の多少で云々する内容では無いのだろうが、それにしても、この大量虐殺とも言える事態は尋常では無い。

ことの性質が異なる、という意見もあろうが、ナチスによるユダヤ人の大量虐殺と、何処かで繋がる恐ろしい根が存在するような気がしてならない。それは、果たして筆者だけの思い過ごしであろうか?

今年、2016年5月、この忌まわしい悪魔の爆弾を投下した国の大統領が、原爆投下地の一つ広島市を訪問し、被爆者の代表とハグしあう場面も報道されたことは記憶に新しい。公式の謝罪も、また公式の寛恕も無かった。

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