”あなたの感受性を育む”この時季の俳句とは?【11月27日〜12月1日】 (3/3ページ)

ANGIE

冬の季語として使われます。

暗い夜道をひとりで歩いているときに、ヒューヒューと音を立てて吹く虎落笛を聴くと、なんとなく不気味な気がして、思わず早足になりますね。

”もがり”とは本来、貴人を仮葬した「もがりの宮」のことをさすそうです。また、「もがる」(逆らう)という方言からきたという説も。ちょっぴりこわい響きのある風の呼び名ですが、東京出身の俳人、上田五千石(うえだごせんごく)は面白い俳句を詠んでいますよ。
「もがり笛風の又三郎やぁーい」
この句は、宮沢賢治の短編小説”風の又三郎”の世界をベースに詠まれたものです。もがり笛の正体が、風の又三郎と思えばこわくなくなるから不思議ですね。

物語は、ある風の強い日、不思議な少年・三郎が村の小学校に転校してくるところから始まります。子どもたちは、自分たちとあまりに違う表情や行動をする三郎のことを”風の神さまの子”ではないかと噂しつつ、徐々に受け入れていきます。

しかし、三郎はたった11日で転校をしてしまい……まさに風のようにあらわれ、挨拶もなく、風のように去って行ったのでした。

村の子どもたちは三郎が去ったあと、この句のように風に向かって「やぁーい」と声をかけていたに違いありません。ひとりぼっちの夜道、虎落笛を聴くたび、私も風に乗る三郎をイメージして、時々「やぁーい」と声をかけたくなります。風だけでなく、私たちの身近な自然から、イメージを膨らませてみれば、きっとあなたの感受性も育まれるはず。

俳句や、そこに込められている季語は、あなたの感受性を豊かにしてくれる”心のごはん”。あなたも、先人のように自然から栄養を得て、毎日を楽しんでみてはいかがでしょう。

【参考】『くらしを楽しむ七十二候』広田千悦子/泰文堂


連載640x156px
「”あなたの感受性を育む”この時季の俳句とは?【11月27日〜12月1日】」のページです。デイリーニュースオンラインは、旧暦の暮らし俳句小説女子などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る