秋津壽男“どっち?”の健康学「胸の『痛み』と『苦しみ』はどちらが危険?体内発の痛みは命を脅かす可能性が大」 (1/2ページ)
先日、50歳になる患者さんが「酒を飲んだあと、終電に乗ろうと急いで駅へ向かっていたらあまりに息苦しかった。健康に問題はないか」と心配していました。
私からは「運動不足からくる息切れや血圧上昇で脈が速くなったかもしれないが、症状が治まらないようなら検査を受けなさい」と診断しましたが、この患者さんは症状の度合いが深刻だと感じたようで、大いに心配していました。
このとおり、体の痛みや違和感は誰もが気になるところですが、ここで今週の問題です。
胸が「苦しい」のと「痛い」のとでは、どちらが危険でしょうか。
胸が苦しい場合は、狭心症のほか、ぜんそく、逆流性食道炎、慢性閉塞性肺疾患などが該当します。
対して胸の痛みは、心筋梗塞、狭心症、大動脈破裂、大動脈解離など、いずれもポックリ逝く病気です。
胸が苦しい場合、すぐに死に直結しないので、タクシーで病院へ行っても間に合いますが、痛い場合は今日明日にも死ぬ可能性があり、救急車で病院へ行かねばなりません。
苦しいのも痛むのも、どちらも大変な病気ですが、死に至る病気を考えると「痛み」のほうが危険度は高くなります。
人間の感覚は、指先は皮膚など「体の表面」は敏感ですが、実は内臓に関しては鈍感です。同じ痛みでも、その痛みがどこから来ているかは大ざっぱにしかわかりません。自分では「肺の調子が悪いようだ」と思っていても、実は心筋梗塞だったという例もあります。
みぞおちが痛いと思っていたが肺の病気だった、というケースもあります。
「痛み」を伴う狭心症は血管の閉塞や狭搾により血流が減少するため、痛みを表現すると「胸全体が締めつけられる」ような感覚となります。心筋梗塞の場合も「胸の周辺が押しつぶされるように」、あるいは「焼け火鉢で突き刺される」ように激しく痛みます。
どちらも胸全体が痛むため、指先で痛む個所を指すことはできません。逆に言えば、「ここが痛い」と指せるピンポイントな痛みの場合、狭心症や心筋梗塞のような心臓疾患ではありません。痛む個所が心臓だと思っていたら肋骨だった、ということすらあります。